集会を踏みにじり、「尹錫悦退陣投票」締め付け…批判の口ふさぐ政権
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史の候補公認介入疑惑がふくらむにつれて「政権退陣運動」が勢いを増している中、運動の封じ込めを狙った政府の対応も全方位的に展開されている。野党と市民社会団体は、公権力を動員して政権の防衛に乗り出した尹錫悦政権の独裁化が急速に進んでいると批判している。 警察は今月9日、「尹錫悦政権退陣第1回総決起」集会を違法としたうえで、強硬対応を宣言している。警察と市民との物理的衝突で10人あまりの市民が負傷し、「過剰鎮圧」だと批判されているが、警察はそれを認めていない。11日に開かれた国会行政安全委員会の全体会議で、野党は警察が当初から強硬鎮圧を準備していたという疑惑を提起した。野党「共に民主党」のイ・グァンヒ議員は、「警察はすでにデモコースを知っていながら、わざと狭い区域での集会を許可し、集会参加者が許可区域外に出ることを企画していたかのように制止した」とし、「警察は三段棒と盾で武装した特殊鎮圧服を着た警察力も投入したが、最近の都心での集会でこのように重武装した警察力が投入されたことがあったか」と批判した。しかしチョ・ジホ警察庁長は、「一部の参加者が申請範囲を逸脱して道路の全車線を占拠するなど、違法行為がかなりのあいだ持続していた。集会に参加していない市民の不便も考慮しなければならない中では、違法行為を制止せざるをえない状況だった」と語った。「警察の集会デモの鎮圧過程は威嚇的で危険千万だった。警察があたかも衝突を誘導したように感じる」という行政安全委員会のシン・ジョンフン委員長の指摘に対しても、「衝突を誘導したということには同意できない」と反論した。総決起集会を「違法」なものとして既成事実化し、鎮圧の正当性ばかりを強調したのだ。野党議員からの謝罪要求も一蹴した。 9日夜には、釜山(プサン)にある国立釜慶大学の、退陣投票ブースの設置をめぐって学生と当局側が対立しているキャンパスに、200人あまりの警察官が動員された。釜慶大学の学生と釜山大学生キョレハナ、尹錫悦退陣大学生行動(準)は釜山南部警察署に、11月7日から12月5日まで学内で退陣投票活動を行うという集会届を提出したうえで、キャンパスにブースを設置していた。だが、大学当局は退陣投票を制止し、それに抗議して学生たちは座り込みを開始。当局側の通報を受けた警察が出動した。この過程で9人の学生が退去拒否の疑いで釜山南部警察署に連行され、10日未明に釈放された。釜慶大学の関係者はハンギョレに、「学内で政治、宗教、営利などの行為はできないという『施設使用許可指針』に則って(ブース設置を)不許可にしたもの」と説明した。釜慶大学4年生のワン・ヘジさんは「(政治イベントは許可しないという)当局の指針は憲法上の権利である集会の自由より優先されうるのか。よりよい世の中を作るために声をあげる学生を抑圧している」と述べた。 政府による退陣投票の封じ込めは、公務員組織に対してはより直接的だ。人事革新処は今月5日、退陣投票について監査院、放送通信委員会、検察庁などに「国家公務員法などの関係法令に抵触する行為をおこなって不利益を被るようなことが発生しないよう、万全を期してほしい」とする公文書を送った。教育部は投票参加を訴える文章などを全教組のウェブサイトに投稿した全教組のチョン・ヒヨン委員長らについて、先月31日に国家公務員法違反容疑で警察に捜査依頼した。教育部の関係者は「(退陣投票参加を訴えるのは)正当な労組活動とはみなせない」と述べた。 公権力と政府の権限を利用した政府批判運動の締め付けに対しては、各界から警告と懸念の声があがっている。共に民主党のイ・ジェミョン代表はこの日の最高委員会議で、先日の都心集会で警察の暴力的な鎮圧があったことに言及しつつ、「1980年代に白骨団がデモ隊を無差別に暴行した現場を思い出した」と語った。そして「民主国家大韓民国が独裁化の道を歩んでいると非難されるうえ、国民が表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本権を行使することで警察に殴られたり、負傷したり、血を流したりといったことが起きそうだ」と述べた。参与連帯もこの日発表した声明で、「警察は支持率17%でかろうじて持ちこたえている尹錫悦政権の防衛ではなく、集会デモに立ち上がらざるを得ない極限状況に追い込まれている国民を保護すべきだ」と述べた。 コ・ナリン、イ・ジヘ、オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )