「死刑に賛成でも反対でも、執行を実際に見たら失望する」アメリカの元刑務官が語る制度の実態 今改めて考えたい「死刑」
モーガンさんは現在、死刑制度には反対している。理由は、「政府は自国民を殺してはならない」という信念からで、冤罪の恐れもあるからだ。そして、ただ単に刑務所で働いているとの理由から、執行を刑務官が担うことにも疑問を感じている。 ▽取材後記 筆者は、フルブライト奨学金で2022年8月から2023年4月末までカリフォルニア州立大学フラトン校で学びつつ、死刑制度に関係する人々を取材した。執行に携わったことがあり、取材に応じてくれる刑務官を探すのはアメリカでも容易ではなく、モーガンさんに出会うことができたのも幸運だった。 今の日本では刑場を取材することは不可能に近いため、実際に使用されていた刑場内部を見学できたことは貴重な経験となった。 日本では、全国7カ所の拘置所などに刑場があるが、衆参両院の法務委員会の国会議員らの視察を除き、立ち入りはほとんど許可されてこなかった。2010年8月に当時の千葉景子法相が「国民的議論の材料になるのではないか」と異例の指示を出し、報道陣に対する東京拘置所の刑場公開が実現した。その後は一度も公開されていない。