撮影/吉場正和

昨季、38年ぶりに悲願の日本一に輝いた阪神タイガースは今季、球団史上初の連覇に挑む。その戦いぶりを、2004~2008年の第一次岡田彰布政権下で先発投手として最も多くの勝利数を記録(5年間で55勝)した野球評論家・下柳剛氏が分析。当時の経験を織り交ぜた確かな洞察力は阪神ファンならずとも必読だ。 【一覧】プロ野球「最も愛された監督ランキング30」最下位は、まさかの…

オールスター前から打線が一変

交流戦明けからオールスターまで、阪神は24試合を戦い(2試合が中止)、11勝12敗1分の成績だった。この期間、決して打線の調子が上向いたとはいいきれず、完封負けが4。投手陣の疲弊も否めない中、それでもなんとか負け越しを1でしのいだ。 でも、オールスター戦前の最後の試合に変化が見えた。広島を相手に12―3で圧勝。1番近本が2安打を含む4出塁1打点、2番中野が2安打1打点。3番森下、4番佐藤(輝)、5番大山のクリーンナップで7打点。打線が理想的に機能した。 チームは借金生活に陥りそうでギリギリそれを回避してきたけど、この試合以降オールスターを挟んでチームは8連勝。徐々にヒットが出るようになり盗塁の数もちょっとずつ増えてきた中、エンドランなど足を絡めた攻撃を増やすことでクリーンナップが打ちやすい形ができてきたと思う。打点が増え、ホームランも増えてきた。 今やリーグの得点圏打率トップを阪神勢が占めるまでになった(1位森下、2位佐藤輝、3位大山、5位近本/8月6日時点)。交流戦前後と比べると、まるで別のチームみたいになってきている。

打線復調の立役者は、1軍と2軍の好連携にあり

「オールスターブレイク」と言うけど、じつはピッチャーはまったく休めない。自分の場合も次のローテーションに合わせて普通に練習をしていた。野手陣は多少休めるかもしれないけど、この連勝にオールスターの休みがどれだけ影響したかはわからない。気分転換にはなったかもしれないけど。 気分転換と言えば佐藤(輝)、大山、森下の3人は一度2軍に行ったことが今の調子の良さに結びついている気がする。チームのクリーンナップ3人が、それぞれ2軍に行くなんて球団はなかなかないし、そのような事態になったのは今シーズン阪神だけじゃないかな。 それでも、2軍で振り込んだり身体のキレを作ったりして、3人とも1軍に戻ったらきっちり打撃面で結果を残せている。特に大山は2軍に行って身体が痩せ、スイングが強くなって戻ってきた印象が強い。なにより調子が悪くて悶々としていた状況から一度脱して、のびのびと野球をやって返ってきたことで、心持ちがガラリと変わったんだろう。 だとすれば、阪神の1軍と2軍の連携がしっかりとれているということになる。1軍からの指示と2軍からの報告、それがうまくかみ合っているから選手たちが思った通りに復調してくれる。1軍と2軍の意思疎通が今のチーム状態を生み出してくれたといっていい。 プロフィール 長崎県出身。1990年ダイエーにドラフト4位で入団。1996年、日本ハムへ移籍。先発・中継として活躍し、60試合以上登板が4度という鉄腕ぶりを発揮した。2003年に阪神へ移籍し、黄金期の中心ピッチャーとして9年で5度の二桁勝利。2005年には史上最年長で最多勝を獲得した。2013年の現役引退後は解説者として活躍する一方で、釣りやアウトドアなど趣味をいかした番組にも多数出演。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　柳に風【下柳剛公式チャンネル】https://www.youtube.com/@yanaginikaze ………… 後編記事『いざ首位奪還へ！“アレンパ”に向けて「死のロードは好都合」大混戦セ・リーグで「阪神優勝のカギ」を下柳剛が提言』では、史上初の連覇に向けてタイガースはどのように後半戦を戦っていくべきか、下柳氏が解説する。