「好きな人ができた。離婚してほしい」とメールが…夫のダブル不倫、結婚27年目の裏切り。還暦過ぎの妻「それでも別れたくない」【弁護士が解説】
財産分与・慰謝料の請求
相談者の質問にもあるとおり、本件のように不倫が原因で離婚に至る場合、有責配偶者に対し、(1)財産分与に加えて、(2)不倫を原因とする離婚慰謝料を請求できます。 (1)財産分与について 財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して形成した財産(夫婦共有財産)を離婚時に原則2分の1ずつ分割するものです。 本件では、配偶者が会社を経営しているということですので、法人・個人の名において夫婦共有財産を保有していないかの検討を忘れないよう注意が必要です。法人の事業や財産は、法人に帰属するものですから、原則財産分与の対象とはなりません。しかしながら、ご夫婦の協力によって法人の財産を築いたとして財産分与の対象となりうる場合があるため、十分な検討が必要です。 また、離婚がやむを得ないとなった場合には、離婚を先行してしまうのではなく、離婚の条件として全財産を開示し合ったうえでしっかりと財産分与を行うことがよいといえます。なぜならば、離婚を求める相手に対し、離婚前であれば、離婚と引き換えに有利な条件を引き出せる可能性が高いからです。 話し合いの場において、配偶者が財産開示を拒んだり財産を隠したりするような場合には、弁護士や裁判所を通じた財産調査の方法を検討することがよいでしょう。 (2)不倫を原因とする離婚慰謝料 離婚慰謝料とは、離婚によって生じた精神的な苦痛を慰める目的で、一方の配偶者から他方の配偶者へ支払われる賠償金です。 慰謝料の請求に値する有責行為が認められる場合に請求が可能となります。本件のように、不倫によって離婚に至る場合にも請求できます。 もっとも、いざ、離婚の際に不貞行為を否定されれば、そもそも有責配偶者であるか否かが問題となり、離婚慰謝料すら請求できなくなる可能性があります。そこで、まずは有責配偶者であることの証拠、つまり不貞行為が認められるだけの証拠を集める必要があります。 本件では、配偶者からの自白があったとしても、後々これを否認される可能性もあります。また、「好きな人ができたから離婚してほしい」旨のメールがありますが、それだけでは証拠として十分とはいえません。そして不倫相手が義母にも会っていたとしても、配偶者の母親である義母から有力な証言を得られるとも限りません。 そこで、配偶者の不倫に関する自白の録音やメッセージのやり取りを保存することや、配偶者と不倫相手との親密な関係を、2人のやり取りや行動調査などで把握し証拠化できるとよりよいでしょう。 また、慰謝料については、離婚慰謝料とは別に、不倫相手に対して、不倫を原因とする慰謝料請求を行うことができます。不倫は、配偶者と不倫相手の2人で行ったものであり、原則として2人が2分の1ずつ責任を負うものといえるからです。なお、不倫の慰謝料を2人からそれぞれ全額回収することは、慰謝料の二重取りとなるため、裁判上認められないことに注意が必要です。 飯沼 楓 弁護士法人名古屋大光法律事務所 弁護士
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