実は50人に1人…見逃さないで!「子どもの弱視」早期発見に“3歳児健診”が大切な理由
■早期に発見すれば改善できる可能性が高い
この日、飯森助教のもとを訪れた松山市に住む田中ユウトくん(3歳・仮名)。市の3歳児健診で乱視疑いとなり精密検査を受けていた。 ユウト君の父親は、他ならぬ眼科医であるが「家では正確に視力を測れないし日常生活で困っていることもなかった。健診をきちんと受けないと気付けなかった」と言う。 検査の結果、ユウトくんは片目の弱視と診断され、その後メガネを使っての治療を進めることとなった。 飯森助教によると、治療の基本はメガネをかけること。それでも視力に左右差がある場合はアイパッチなどで良い方の目を隠し、悪い方の目を積極的に使うようトレーニングする。4歳頃までに治療を開始できれば多くの場合、視力は1.0以上になるという。
■弱視を見逃さない!導入すすむ「フォトスクリーナー」とは
近年3歳児健診をきっかけに弱視の治療を開始する子どもが増えていると言われているが、飯森助教はこれを“弱視の発見率”が向上していることによるものだと説明する。 これまでの3歳児健診では、各家庭で簡易的な視力検査を行った上で、健診会場で保健師が2次検査を実施。そこで精密検査が必要な子どもを眼科医につなげるのが一般的だった。しかし実際、3歳児に対して正確な視力検査を行うことは難しく、弱視のリスクが見逃されていたケースも多いと考えられる。 そこで、弱視の発見に一役買っているのが「フォトスクリーナー」による屈折検査。カメラで写真を撮られる感覚で、遠視・乱視の程度やその左右差などのデータをわずか数秒で取ることが可能となった。
1台およそ120万円と高額だが、厚労省が22年度、母子保健対策強化事業のひとつとして、市町村に対して検査機器の購入にかかる費用の補助を開始。これにより、全国的に「フォトスクリーナー」の導入が進んでいる。 愛媛県内でも全市町の3歳児健診で使用されるようになり、多くの自治体で「要精密検査」「要治療」とされる子どもが増加し、弱視の発見にもつながっている。
■子どもの弱視は「症状がない」場合が多い
飯森助教によると子どもの弱視や斜視のサインは、 ・黒目の位置が真ん中でない ・あごを上げて(または下げて)、首をかしげてものを見る ・片目をつぶって見る ・ひどくまぶしがる ・目が揺れている(眼振) これらの症状がひとつでも当てはまればすぐに眼科を受診してほしいという。 そのうえで「注意しなければならないのは、“症状が何もない”場合が多いということ。特に不同視弱視については片目は見えているので、3歳児健診で引っかかっても『困っていることはない』という人がほとんど。そのため、健診で要精密検査とされても『まだ大丈夫だろう』と、病院に行かない保護者もいます。必ず、早めに眼科を受診してほしいです。また、発見が5歳以降になると視力の改善は難しくなるが、たとえ小学生や中学生であっても諦めず治療はするべき」と強調する。
■スマホやタブレットの使い過ぎは近視に影響
「スマホの使用」が弱視の増加や発症と関連するという報告はないものの飯森助教は、小学生の「近視」人口増加に影響していると指摘。 またスマホやタブレットの使い過ぎで内斜視を発症する場合があり、一部で弱視を引き起こしている可能性もあるという。目と画面を30センチは離すこと、30分に1回は必ず5分程度休憩する、外遊びを取り入れるなどを日々意識する必要がある。子どもたちの目を守るために、大人がしっかりと見守ることが大切だ。