早野忠昭理事長が語る東京マラソン2023の舞台裏
2007年に第1回となる東京マラソンが開催されると、日本のスポーツ界と東京の風景が徐々に変わっていく。国内にマラソンブームが起こり、チャリティ文化が発達。東京がひとつになる一日は多くの〝レガシー〟を創出してきた。 そんな東京マラソンをレースディレクターとして、長年引っ張ってきたのが早野忠昭氏だ。昨年9月19日、一般財団法人東京マラソン財団の新理事長に選任された(東京マラソン2024のレースディレクターを兼務)。これまでどのようにレースを創造してきたのか。早野新理事長のインタビューをお伝えする(全2回の1回目)。
世界トップの戦いを東京で見せる
東京マラソンは第1回大会から3万人以上が参加するなど、日本初ともいえる大型都市マラソンとして人気を高めてきた。同時に、「グローバルスタンダード」を掲げて、レースを組み立ててきたという。 「日本国内の大会ですが、基本的に日本人に合わせるようなレースはしていません。世界トップの戦いを東京で見せる。有力選手を呼ぶにはお金がかかるんですけど、マーケティングをきっちりやって、先行投資として強い選手を集めてきたんです」 その結果、東京マラソンの優勝記録は上昇。2013大会からはアボット・ワールドマラソンメジャーズにも加入した。その後も世界トップ選手へのアタックを続けると、2021大会(2022年開催)には男子マラソン世界記録保持者(当時)のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が参戦。2時間02分40秒の国内最高記録&コース新記録を打ち立てて、東京マラソンの〝バリュー〟がさらに上がった。 「10年以上前からグローバルスタンダードを掲げてきましたが、日本の選手や監督の意識はそこまで高くなかったと思います。それが大会を重ねる度に変わってきたんです。シューズの進化もあるとはいえ、2018大会で設楽悠太選手が16年ぶりの日本記録となる2時間06分11秒を樹立。2021大会は大迫傑選手が2時間05分29秒で日本記録を塗り替えると、19人もの日本人選手がサブ10 (10分切り)を達成しました。近年は2時間7~8分台では日本代表になれない、そういう意識が定着してきたと思います。日本のレベルアップが素直にうれしいですね」