早野忠昭理事長が語る東京マラソン2023の舞台裏
東京マラソン2023の舞台裏
前回の東京マラソン2023も最後までワクワクがとまらないレースになった。男子は3人の日本人選手が終盤まで上位争いを展開。最初にフィニッシュテープを切ったデソ・ゲルミサ(エチオピア)の29秒後に、山下一貴(三菱重工)が日本歴代3位の2時間05分51秒(7位)で駆け込むと、其田健也(JR東日本)も2時間05分台でフィニッシュ。現役復帰2戦目となった大迫傑(Nike)も2時間06分13の好タイムで走破したのだ。「グローバルスタンダード」を掲げる東京マラソンで日本人選手がトップを争うシーンはなかなか見られないが、早野理事長は意図的にこの状況を作ってきたという。 「どのようなレースをするのか。春先から考えながら、招待選手に声をかけてきました。前回大会は、日本人選手にフォーカスしたレースを組み立ててきたんです。あえて2時間1~2分台の選手は呼ばず、海外招待は2時間4分台の選手が中心でした。日本人選手に記録を出してほしい、という意図で、終盤まで上位で競り合う形 が作れて、5分台がふたり出た。それはひとつの成果として見ていいんじゃないでしょうか」 一方、女子の日本人選手は10㎞付近から海外勢についていけなかった。最終的にはローズマリー・ワンジル(ケニア)が世界歴代6位(当時)の2時間16分28秒で優勝。日本勢は松田瑞生(ダイハツ)の2時間21分44秒(6位)が最高で5分以上の大差をつけられた。 「女子は松田選手、一山麻緒選手らが記録を狙ったんですけど、力の差は歴然としていたかなという印象です。フィニッシュ タイムが2時間18分30秒ぐらいでペース設定はしていたんですけど、外国人選手には遅く、日本人選手には速すぎた。選手がペースメーカーについていくのか、いかないかは、わからないですけど、日本女子の強化はもう少しかなと感じます」
東京で「世界一のレース」を!
東京マラソンは2027年にメモリアルとなる第20回大会を迎えることになる。 早野理事長は「世界一安全・安心な 大会」「世界一エキサイティングな大会」「世界一温かい大会」という3本の柱を立てて、「世界一の街・東京で、世界一の東京マラソンを実現していきたい」というビジョンを掲げている。 「理事長として、これまでとは違う立ち位置で東京マラソンをもっと大きくするためにどうしたらいいのか考えていくことになります。東京マラソンは、国内では309億円もの経済効果があると算出されています。東京都は2億円を拠出し、20億円もの税収効果が出ているとの試算もあります。世界記録を狙えるようなレースを演出するだけでなく、出場するランナー、大会を支えるボランティアスタッフ、沿道の観衆、東京マラソンに携わる全員がワクワクするような大会にしていきたい」 3月3日に開催される東京マラソン2024には、男子マラソンの前世界記録保持者で五輪を連覇中のエリウド・キプチョゲ(ケニア)と、昨年のロンドンマラソンとシカゴマラソンを制したシファン・ハッサン(オランダ)の出場がすでに発表されている。 男女とも世界の超スーパースターが来日することになるが、早野理事長はどんなレースを描いているのだろうか(第2回に続く)。
酒井政人