<トランプに宣戦布告するバイデン>アメリカを分断する物の文化と文字の文化の対立とは?
バイデン大統領は、年齢問題を払拭するかのような力強い一般教書演説で、トランプ前大統領への戦いの狼煙を上げた。どちらの候補も嫌いという有権者は多く、今年の米大統領選挙は、MAGA派以外の票の奪い合いとなろう。 バイデン大統領は、上下両院で行われ全国に生放送される大統領の一般教書演説を、いわば宣戦布告に利用した。協調的に超党派で行うことが得意のバイデン大統領だが、高齢問題を払拭することも狙った明らかな戦闘モードで、13回も「私の前任者」と、名前は出さずにトランプを攻撃し、闘志をむき出しにした。 繰り返されるトランプからの揶揄や非難に対するバイデン陣営の反撃戦略は、以下のようなものである。(1)バイデンの年齢問題に関しては演説で 「私は若くはないが」と述べたように、自分からユーモアをもって年齢を持ち出し「私の年齢になると色々な事がより鮮明になる」とプラス面を強調すること、(2)トランプ問題に対しては法律や道徳感を持ち出すのではなく政策で勝負すること、(3)トランプの描く暗い米国ではなく、レーガンの描いたような希望の国を描くこと等である。 一方、トランプは相変わらず「取り残された」、「不当に扱われている」と恨みを抱く有権者を煽る戦略を変えていない。トランプの強みは、何があってもトランプを支援するMAGA派の熱狂者がいることである。バイデン支持派のうちバイデンに積極的に投票するという有権者はわずか31%であるのに対し、積極的にトランプに投票するというトランプ支持者は57%いる。
米国の分断は、教育レベルや宗教観だけでなく、物の文化と文字の文化の対立でもある。物の文化とは、自動車、鉄鋼などのモノづくり文化を言い、文字の文化とは、弁護士、ジャーナリスト、大学教授、ドットコムなどの起業家が生む文化社会である。エリートとされる後者の中でも、高学歴、高収入そして影響力のある限られた人々は、特にMAGA派の強い恨みを買っている。