東京Vの城福監督、入り改善へ「自ら火をつける」選手求む…「去年に比べソリッド」と評価するG大阪撃破へ
東京ヴェルディの城福浩監督が、13日にクラブハウスで行われた会見でガンバ大阪戦への意気込みを語った。 【写真】「世界に誇れるぞ」東京Vが16年ぶりにJ1で戦うユニフォームが発表! 前節、3連勝を狙った鹿島アントラーズ戦を3-3のドローで終えた東京Vは、11位に順位を落としたが、リーグ無敗を「10」に更新。15日に味の素スタジアムで行われる明治安田J1リーグ第14節では、今シーズン2度目の連勝で5位に浮上したG大阪と対戦する。 鹿島戦は後半立ち上がりまでに3失点を喫する厳しい展開を強いられたが、選手交代と布陣変更で流れを変えて69分、81分に続けてゴールネットを揺らして1点差に迫る。そして、6分が加えられた後半アディショナルタイムの93分にMF見木友哉が決めた同点ゴールによって劇的な形で難所から勝ち点1を持ち帰ることになった。 開幕3試合連続の後半終盤の失点によって勝ち点を失った一方、直近は3試合連続の後半アディショナルタイムの得点によって2勝1分けと勝ち点奪取に成功。良くも悪くも劇的な試合が多い、今季の戦いぶりを評して“ヴェルディ劇場”と揶揄する向きもある中、指揮官は「反省ばかり」と前節を含めたチームの課題について言及。 鹿島戦だけでなく劣勢を強いられた京都サンガF.C.戦、湘南ベルマーレ戦にも見受けられた前半の戦い方については、「インテンシティの高い前半の入りをしてくるチームに対しては、大体苦戦している」と、チームとして明確な課題だと捉える。 「前半で出来がいい試合も中にはありますが、圧力がかかったというか、インテンシティの高い前半の入りをしてくるチームに対しては、大体苦戦している。そこが学べていないという言い方がいいか、このチームの大きなひとつの問題だと思っていますけど、どちらかというとスロースターターの選手が多い」 「(前半は)ルーズボールで負けていた。バウンドしたボールに対する身体の入れ合いで既に負けていて、そういうシーンが至るところにあった。それぐらい鹿島の入りというか、25分、30分ぐらいまではインテンシティが高い中で、なかなか五分で戦えなかった」 「勝つシーンも負けるシーンもありますが、五分五分に転がったボールがほぼほぼ鹿島に行っていたというのが現実。選手にもそれは見せましたし、共有しました。4連続ぐらいでルーズボールに競り負けているシーンも見せましたけど、やり方というよりもそこだと思います。後半に関してルーズボールで競り合うところで得意としたメンバーが揃ったかというと、全くそういうわけではない。ただみんなの尻に火がついた。それでは遅い。なので、劇場みたいなので良かったねと僕は全く思っていないです。むしろ何回繰り返すんだという思いの方が強いので、その部分も含めて、今日のフィードバックはかなり強めでした」 さらに、指揮官は若手中心のスカッドにおいて、「自ら火をつけて」チームを引っ張っていく選手の登場を強く求める。 「どうしてもそこで自ら火をつけて自分が先頭に立って、自分が最初に変わっていくんだというぐらいの気概を持ってやるキャラクターというか、ここはこのチームがブレークスルーできるかどうか、ひとつ上に行けるかどうかのカギになるかなと思っています」 「まだそこの部分で自分は解を見つけ切れていない。それ故に、このような試合展開になっていると。チームの戦い方として、自らが火をつけられる集団になっていかないと、上位相手にはやはり苦しむのではないかと思います」 「当たり前ですけど、ルーズボールでエネルギーを半分以上使いながら自分たちのペースに、あるいは自分のペースに持っていく選手が1人でも増えないといけない。これはこのチームが対等に戦えているようで、まだまだ分担制という言い方がいいか、まだチームに火をつけて自分で戦って、しかも落ち着いた状況のゲームの中で、今度はヴェルディらしくボールを回していくという全ての局面で、先頭に立てる選手がいるかというと、ここは戦いながら成長しながら、誰がそこの先頭を切っていってくれるのかは、今も楽しみというか、みんなの背中を押しながら一歩先に出てくる選手を、待ちたいなと思います」 そういった意味で、指揮官の求める役割に最も近い仕事を見せているのが、“ゲームチェンジャー”として鹿島戦ドローの立役者となったMF齋藤功佑だ。 先発出場でも途中出場でもチームに安定感をもたらす多才なMFに関しては城福監督も「ひとつ我々として核になっている」とその貢献度の高さを認める。 「彼はプレーもそうですけど、やっぱりちょっとエネルギーを持って入ってくれる。チームにエネルギーをもたらすような入り方をしてくれると、彼が守備の人とは言わないですけど、守備においても全く手を抜かない。攻撃においては縦横無尽にボールに絡みますし、自分が託された時間で全てを出して、自分が勝ち点をもたらしているという覚悟というか、熱量というのを持って入ってもらえる選手なので、これはすごく貴重。彼のような熱量というのか、エネルギーというか、それが先発組も含めて、1人でも2人でも伝播していくと、チームとしてもうひとつ成長できるのではないかなと思います」 現状では唯一無二とも取れる特長を持つだけに、齋藤の起用法に関しては指揮官としても大きな悩みどころ。「もちろん先発という選択肢もある」としつつ、互いに消耗が激しい前半入りの部分で力を発揮させるか、「アイデアを出せるようなゲームのシチュエーションになった上で、特徴を出してもらうことが有益なのか」を見定めたいとしている。 一方、齋藤と同様に“チームの心臓”として最も替えが利かない選手の一人であるMF森田晃樹に関しては、ビルドアップの起点を担い、直近2試合連続でアシストを記録するなど、ゲームメーカーとして抜群の存在感が光る一方、対戦相手の徹底監視に晒されてピンチに繋がるパスミスやボールロストも散見される。 その若きキャプテンについて城福監督は、「今は工夫時」とチーム、森田自身がさらなる高みに到達するための奮起を促す。 「森田晃樹について、おそらく相手チームからすれば、『彼を潰せ』ということになっていると思います。それを理解した上で、彼はプレーしなければいけない。90分を通した中で、インテンシティというか、プレッシャーがアベレージの数字に近い状況で、自分にプレッシャーが来ると思ってプレーをしたら、それはたぶん本人にとっても、チームにとっても非常に苦しい展開になる」 「自分には特別なプレッシャーが来ると思ってプレーをする、そういう準備をしてピッチに立つ。準備というのはウォームアップの準備という意味ではなく、2歩3歩のポジションの準備だったり、ボールをふたつ触る前に周りを見ておくということだったり、自分が動くことによって、人にスペースを与えることだったり、そういうことをしながら、少し全体のプレッシャーが落ち着いてきたときに、本来の自分のペースを掴んでいくというような、今は工夫時だと思います」 「彼はそこで強いプレッシャーを受けてかっさらわれて、そこから目が覚めてという、このサイクルはチームもそうですけど、彼も脱しなければいけない」 また、指揮官が常々、J1残留に向けて“成長”、“伸びしろ”を大きなテーマに掲げる中、鹿島戦で初スタメンを飾ったDF山田裕翔は2失点目に関与するなど、いわゆる“授業料を払わされる”ほろ苦い一戦に。試合後のファン・サポーターへの挨拶の際には悔し涙も見せていた。 チームの財政事情もあり、そういったリスク覚悟で若手抜擢をいとわない指揮官は、選手を育てながらJ1で結果を残していくという、極めて困難な両立についての考えを明かした。 「もちろん引き分けに満足はしてないですけど、それでも勝ち点1で終わったからこそ言えるセリフかもしれないですが、おそらくレンタルの選手が多くなければ、ほとんどが自前の選手だったら、彼はあの舞台に立てるチャンスというのは、ほぼなかったと思います」 「このクラブにいて、今のヴェルディが出場のチャンスを求めて、レンタルでこのチームにたくさん来てくれて、彼らが成長していく中で、出られない試合があるからこそ、山田裕翔はチャンスをもらえたわけです。こういうことが、このクラブですごく大事だと思います」 「もう盤石の完全移籍でここにいる選手たちだったら、なかなか難しい。あの鹿島のあのスタジアムの先発で、いろんなことを体験できたことは、やはりそう多くはない。彼はこの経験を大事にしてほしいし、その悔しさというのを感じながら今日も練習をしっかりしていました。これこそが今我々が置かれている中でひとつのプラスかなと思います」 「次も出られない選手(山見大登)がいますけど、だからこそチャンスが来る選手がいるわけで、一度そういう場を経験すると、もう一度立ちたいと思う。それでさらに日頃のトレーニングの熱量が上がっていくというサイクルにしたい」 そういったチーム、個々の成長を意識しながら中2日で臨む上位連戦2試合目に向けては、昨季J1でリーグワーストタイの61失点から、今季はリーグ最少タイの10失点と見違えるような守備の改善がみられるG大阪を警戒。とりわけ、「今のガンバを象徴している選手の1人」と、MFダワンへを高く評価した。 「去年に比べて本当にソリッドなチームになったなと思います。中盤の強度が上がりましたし、前線にはクオリティの高い選手がいますが、宇佐美選手も守備を免除されているかと言われれば、全くそういうわけではないですし、若手もベテランも全員がハードワークをするチームに変貌したなと思います」 「また、外国籍の選手も本当にクオリティが高く、インテンシティが高い。ボランチのダワンとかは本当に球際も強いし、3列目からゴールまで入ってきますし、なかなか警戒するにしても対策のしようがないぐらい彼自身がインテンシティの高さを発揮してくる選手なので、今のガンバを象徴している選手の1人かなと思います」 16年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた東京Vにとって、1993年の開幕日である5月15日の“Jリーグの日”に行われるG大阪とのオリジナル10対決は、感慨深いものがあるが、当時とは大きく立ち位置が入れ替わった中で臨む一戦で2試合ぶりの白星を掴み取れるか。
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