【解説】北朝鮮が特殊部隊含む1万2000人をウクライナ投入か“兵力補充”と“実戦経験”で思惑一致も…露朝の狙いは?
■北朝鮮の“暴走”に“後見役”中国は沈黙…
“北朝鮮の参戦”情報にウクライナ以外の国々の懸念も深まっている。韓国メディアによると、韓国大統領府は北朝鮮の部隊派遣は「国際社会に対する重大な安全保障上の脅威であり、あらゆる手段を使って対応する」と表明した。 一方で、中国は沈黙を保っている。これまで、北朝鮮の核・ミサイル開発などをめぐり、国際社会が影響力の行使を期待してきたのは“後見役”の中国だった。 しかし、この1年、北朝鮮製の武器がウクライナの戦場で使われた“証拠”が次々と明らかにされても、中国にその役割は期待できないと考えてか、北朝鮮のロシアへの過度な肩入れをやめるよう要求する声は、ほとんど起きなかった。
■北朝鮮“参戦”か…ロシアと北朝鮮の狙いは?
北朝鮮軍のウクライナ派遣の真偽は今後、明らかになるだろう。しかし、北朝鮮が本当に1万人を超える兵士をウクライナに派遣するなら、その狙いはどこにあるのか。 まず、プーチン大統領にとっては「兵員不足」を埋めることができる。イギリス国防省によれば、先月のロシア軍の1日あたりの死者は1200人超。国内の反発もあり、大幅な動員は厳しい。北朝鮮からの派兵は、プーチン大統領にとって「のどから手が出るほど」ありがたい援軍となる。 北朝鮮軍にとっては「実戦経験」を得る機会になり得る。ウクライナの戦場は無人機をはじめとする21世紀の兵器の実験場。ここで実戦経験を積めば、北朝鮮軍は能力を大きく向上させる一方、日米韓にとっては大きな脅威となる。 加えて、ロシアに“貸し”を作るためという動機も考えられる。北朝鮮はロシアと今年、軍事などの協力強化を目指す条約に署名した。この中では「一方の国が武力侵攻を受けて戦争状態になった場合、他方の国は保有するあらゆる手段で遅延なく軍事支援を行う」と規定している。北朝鮮は、これを受けて“実績作り”に励んでいるのではないかともみられる。 北朝鮮はロシアとの条約締結と軌を一にして、韓国への敵対姿勢を日増しに強めている。北朝鮮のウクライナ紛争への肩入れは、極東で緊張が増した際に、ロシアの後ろ盾を期待してのことではないかとの見方もできる。北朝鮮のウクライナ侵攻参戦は、東アジアの安全保障環境と切り離すことはできない。