「しょう油」「しお」「とんこつ」…ラーメンのジャンルは何種類ある?今、最も“熱い”のは「しお」説
では、どのようにジャンル分けをすれば?
では、どのようにジャンル分けをすれば良いのでしょうか。実はこれ、簡単に答えが出る話ではありません。確かに、「醤油」、「塩」、「味噌」、「その他」などと、タレの味のみにフォーカスを当てれば論理破綻は生じませんが、これは無味乾燥この上ないでしょう。これに構成面に着目した区分を加味し、「醤油汁そば」、「醤油つけ麺」、「塩汁そば」、「塩つけ麺」、「味噌汁そば」、「味噌つけ麺」、「汁なし」としても、違和感は拭えません。やはり、出汁を採っている素材が何なのかが判る要素がどこかにないと、ジャンル名から具体的なラーメンのビジュアルが想起できないため、上手い分け方にはならないのです。ロジカルであることがベストとは限らないのです。 そこで、必ずしもロジカルではないものの、ある程度細分化され、かつ、ジャンル名を聞けばそのラーメンの像が脳裏に浮かぶような分け方を紹介します。一例として、年に1度発売される『東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー(通称『TRY』)』が採り入れている部門分けの仕方が、参考になるでしょう。 『TRY』では、「しょう油」、「しお」、「みそ」、「とんこつ」、「MIX」、「にぼし」、「鶏白湯」、「つけ麺清湯」、「つけ麺濃厚」、「汁なし」の10部門を設け、部門別に審査員が高く評価したラーメンを掲載しています。実はこの分け方、冒頭でお話しした懸念事項は解消されていません。「しょう油」、「しお」、「みそ」と「とんこつ」や「つけ麺」を同列に並べています。ただ、出汁に着目したジャンルを大幅に増やしています。 「とんこつ」に加え、「MIX」、「にぼし」、「鶏白湯」という出汁着目ジャンルを設け、「しょう油」、「しお」、「みそ」がカヴァーするラーメンの範囲を限局化しようとしています。ちなみに「MIX」とは、(動物系出汁と魚介出汁のブレンドスープを用いたラーメンの総称で、『TRY』の造語です。 誤解を恐れずに申し上げれば、ここで言う「しょう油」とは、一般的な醤油ラーメンから、「とんこつ」、「MIX」、「にぼし」、「鶏白湯」を除いたものを指します。除いた4部門のスープは概して濁りますので、「しょう油」はスープが透き通ったものが殆どです。裏側から言えば、「とんこつ」、「MIX」、「にぼし」、「鶏白湯」も通常、醤油ダレ、塩ダレ、味噌ダレを用いますが、それらは「しょう油」、「しお」、「みそ」に含まないこととしています。 「つけ麺」については、スープの濁りの有無に着目し、スープが濁る「濃厚つけ麺」と、濁らない「淡麗つけ麺」とに分けています。「汁なし」は、スープがないラーメンのことで、いわゆる「油そば」、「まぜそば」が属する部門です。 これら10部門の中で、2024年現在、最も盛り上がっているのは「しお」ではないでしょうか。「しお」のスープは、鶏・豚・魚介・昆布等の山海の滋味を縦横無尽に掛け合わせて作られますが、素材の合わせ方は作り手の数だけ存在し、味も店によって様々です。