【ターコイズS回顧】変則的な流れで適性みせたアルジーヌ “牝馬重賞に強い血”が開花する
牝馬重賞に強い血統
アルジーヌは父ロードカナロア、母キャトルフィーユだから、どちらもケイアイファーム生産、ロードホースクラブ所属。出資者にとって一口馬主の魅力が詰まった馬であり、重賞勝利は無情の喜びだろう。母キャトルフィーユはクイーンSなどJRA4勝。姉レディアルバローザは中山牝馬S連覇を達成した。 彼女らの母ワンフォーローズはケイアイファームが輸入。レディアルバローザ、キャトルフィーユと重賞勝ち馬を出し、以降の産駒もケイアイファーム生産、ロードホースクラブ所属で走ってきた血統だ。フラワーCを制したエンジェルフェイスが青葉賞2着ロードレゼルを出してはいるが、この血統はいわゆる女系で、重賞勝ち馬は牝馬ばかり。アルジーヌはこの血統の3代目。ターコイズSの勝利によって、重賞勝利は4代目へとつながった。 アルジーヌはキャトルフィーユに流れるディープインパクトの血が伝える瞬発力と父ロードカナロアが持つスピードのバランスが絶妙。前走カシオペアSの1:44.8、今回の1:33.2のように速い時計が出て、極端に終いが速くない舞台がベスト。これはロードカナロアの影響だろう。牝馬重賞実績に強い血統ではあるが、牡馬相手の重賞にも適性を感じる。 2着ビヨンドザヴァレーは社台ファームが輸入したリリーオブザヴァレーの仔。兄に青葉賞を勝ったヴァンキッシュランがおり、母の父はガリレオであることからも中距離寄りの牝系。ただ、本馬は父イスラボニータに伝わるフジキセキの血が濃い。マイル前後で先行押し切りを得意とし、今回は中盤の緩みを味方に昇級初戦で結果を出した。変則的な流れであったことを踏まえれば、これで重賞即通用と見るのは早計だろう。だが、2走前の清水S勝ちは鮮やかであり、先行勢が手薄なオープン特別なら勝ち負けだ。 3着ドゥアイズも好位で運び、展開を味方につけた。今年はヴィクトリアマイル0.3秒差4着などマイルを中心にしぶとく伸びる競馬が多かったが、昨年暮れのリゲルSや今回のように好位でも立ち回れる。末脚を伸ばすよりも、“粘る”方向に発想を転換させると、成績が上向きそうだ。上がりが速くない競馬に適性があり、アルジーヌとは親和性を感じる。2頭が顔をそろえた際はセットで評価してもいい。 1番人気ミアネーロは8着。パドックは最後尾で、イレ込みが目立った。案の定、スタートで遅れて後方から。流れを考えると、チャンスはなかった。ただし、この状態でも最後は伸びており、やはり中山は合う。精神面を立て直して、再出発してほしい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳