「衝撃」選挙に強い自民深沢氏が国民田中氏に負けた 衆院選で吹いた風 地元紙記者が2024年の政治を振り返る(下)
与党が過半数割れした2024年10月27日の衆院選。静岡県では、選挙に強いとみられていた4区の自民党・深沢陽一氏が、国民民主党・田中健氏に敗れた。自民への逆風と、国民への追い風が生んだ結果の象徴といえる。SNSで注目を集める国民・榛葉賀津也幹事長が気心しれた記者にみせる「プロレス好き」「競馬好き」の一面にも触れる。 静岡新聞編集局ニュースセンターの市川雄一専任部長と宮嶋尚顕政治部長が2024年の静岡県内の政治を振り返る、全3回シリーズの3回目。 市川: 10月27日投開票の衆院選。全国的に与党が過半数割れという結果になった。自民党が負けて、立憲民主党が躍進した。国民民主党とれいわ新選組も議席を増やした。静岡県内では自民党が8選挙区中4選挙区で勝ち、4勝4敗。その前の2021年衆院選では5勝3敗だった。県内の自民党は「負けた」のか? 宮嶋:自民党が負けたとまでは言えないと思う。選挙前から自民党が強いといわれたのが、1区・上川陽子さん、2区・井林辰憲さん、5区・細野豪志さん、7区・城内実さん。その4選挙区は、裏金問題にそれほど影響を受けることなく勝った。 要は、「自民党の◯◯」ではなく、例えば城内さんなら“城内党”というように、個人が地盤として固めているかどうかが重要。 「靴の裏は嘘をつかない」と、自民党幹事長だった二階俊博さんが若手の議員に言っていたという。つまり普段から靴の底をすり減らしながら地元を回って、「逆風のときでも支えてもらえるような地盤をつくっておけ」ということ。それができていた選挙区は、自民党の候補者が相変わらず強かった。 ただ、静岡4区(静岡市清水区と富士宮市、富士市の一部)だけは予想外だった。国民の田中健さんが自民の深沢陽一さんに勝った。 市川:過去には例えば1区の上川さんが負けたり、城内さんが片山さつきさんという刺客を送られて負けたりしたことがあったが、それほどの風が吹かなかったという印象はある。微風として象徴的だったのが4区。 4区で負けた深沢陽一さんは選挙に弱いイメージがなかった。元々静岡市議、静岡県議を務め、自民の望月義夫さんの後継として衆院議員になった。静岡市議のときも、静岡県議のときも、選挙に強いイメージがあった。その意味では国民の田中健さんに負けたのは衝撃的だった。