アン・リー監督が高松宮殿下記念世界文化賞受賞「初の台湾出身受賞者として誇り」
(東京中央社)世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」の第35回受賞者の記者会見が18日、東京都内で開かれ、演劇・映像部門の受賞者に選ばれた台湾出身の映画監督、アン・リー(李安)さんらが出席した。リー監督は「初の台湾出身の受賞者としてとても誇りに思い、この上なく感謝する」と喜びを語った。 同賞は日本美術協会が主催。1988年に同協会の設立100周年を記念して創設された。絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5分野で活躍する世界の芸術家を毎年表彰している。リー監督は「ブロークバック・マウンテン」(2005年)と「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(2012年)で米アカデミー賞監督賞を2度受賞した経歴を持つ。 記者会見で、日本の怪獣映画「モスラ」(1961年)が一番好きな映画だと明かしたリー監督。5、6歳の時に見たといい、劇中歌のワンフレーズを披露してみせた。前日に妻と東京タワーの近くまで歩いた際、思わず劇中でのシーンを思い出してしまったと笑ってみせた。 リー監督は台湾で生まれ、20代で渡米して映画製作などを学んだ。「私の心の中にはずっと矛盾がある。それは帰属感というものだ。これは私がずっと抑え込んできて、表現しなければならないものだ」とリー監督。人生というものは何にも縛られない自由を必要とする一方で、集団への帰属も必要としているとの考えを示し、「ずっとこの中でもがいている。いわゆる理性と感性というものだ。だから私の映画の多くでは帰属感と安心感の欠如が描かれている」と語った。 リー監督の両親は中国大陸から台湾にやって来た。「だから私は台湾では外省人。物事がやや分かるようになって初めて、実は多くの大人は世界の真実を教えてくれないということに気付いた。渡米してから、自分のやり方で少しずつ知っていった。だから多くの時間を空虚に過ごした。私は自分でアイデンティティーを見つけなければならない。このアイデンティティーとは、突き詰めれば一種の文化であり、そして最も空っぽで最も確かなものだ。映画はかえって、私に帰属感を与えてくれた」 「私は台湾で育ち、中原文化の影響、台湾の影響を受けた。私はこのような人なのだ。私たちは米国映画を見るし、日本映画も見る。私は多くのことを経験し、さまざまな形式、内容(の作品)を有している。それは生存と表現の一種のやり方でもある。なぜなら私には決まったものがないからだ」。リー監督は一息ついてから続けて「これはもしかしたら台湾の本来の性なのかもしれない」と話した。 (戴雅真、楊明珠/編集:名切千絵)