「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」「年金カットを避ける“裏ワザ”は」 制度改革であなたの年金給付額はどうなる?
「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」
年金は、主に現役世代が支払う保険料で高齢者世代への支給を賄う「賦課方式」が取られており、これまでに余った分は積立金として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用。23年度の積立金は厚生年金が約243兆円、国民年金は約12兆円となっている。しかし、 「これは使うことはできないのです。団塊ジュニアが全員年金受給者になる『2040年問題』が迫っているからです。厚労省はそのタイミングから積立金を取り崩して対応するとしています」(北村氏) 高齢者を支える人数は激減し、さしあたって積立金も使えない、となると、 「これから年金が増えるというのはあり得ない。年金で豊かな生活を送れるとは思わないほうがいいでしょう。年金制度を存続させるためには給付額を抑制していくしかないからです」(同)
健康寿命から考える
さまざまな改革案により、必死で「延命」が図られているようにも見える年金制度。われわれはどう向き合うのが正解なのか。 「“年金があるからそれなりに大丈夫でしょ?”という時代はもう終わりで、iDeCoやNISAなどの節税メリットを生かして具体的に65歳以降の資産管理を考えたほうがいいでしょうね。早めに準備するに越したことはありません」(北村氏) 無論、年金をいつから受給するのか、というのも重要だ。60歳から70歳の間であれば選択可能だが、現状では65歳から受給する人が圧倒的に多い。65歳から60歳までの間に「繰り上げ」る場合、受給額は減少し、70歳までの間に「繰り下げ」ると、受給額は段階的に増える仕組みである。 「受給のタイミングは健康寿命から考えるのがいいと思います。楽しめるうちにお金がないとどうしようもありません。女性の場合は健康寿命が長い(75.4歳)ため、繰り下げのほうが得でしょう。男性の場合はもう少し短い(72.7歳)ですから、繰り上げも視野に入れるべきでしょう」(同)
「繰り下げの方がいい」
年金を生活費ではなく投資に回す余裕があるなら、 「60歳から受給して投資信託などで運用する、という選択肢も出てきます」(北村氏) この点、先の深野氏は、 「繰り下げのほうがいいと思います。繰り下げると1カ月に0.7%、1年で8.4%支給額が上がります。年8.4%も上がる金融商品はなかなかないですよ。また、在老の対象になる人は繰り下げをしても増額されませんでしたが、今回の改革で在老の対象になる人が減るなら、より多くの人が繰り下げの恩恵を受けられる可能性が高まったといえるでしょう」