「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」「年金カットを避ける“裏ワザ”は」 制度改革であなたの年金給付額はどうなる?
在老ラインの引き上げか廃止を検討
目下検討されているのは、この在老のラインを現行の50万円から62万円や71万円に引き上げるか、制度自体を廃止する案だ。いずれの案でも関係のある高齢者にとってはプラスになるが、12月5日のNHKの報道によると、 〈政府・与党は制度の見直しによって収入が増える高齢者に対して、所得税がかかる際の控除額に上限を設けて一定の税負担を求める案を検討している〉 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。 「働きながら年金を得ている高齢者は、公的年金等控除と給与所得控除、ダブルで控除が使えるわけです。つまり、同じ年収でも、給与所得だけの人よりも手取り金額が増えてしまう。これを機に、そこを改めようということでしょう」
「本当はもっと払える高齢者が多くいる」
在老の見直しを巡って必要となる財源については、標準報酬月額の上限を引き上げる案も検討されている。 「厚生年金保険料は、その人の標準報酬月額によって等級別に決まっています。現在は月額65万円が上限で、以降は80万円稼いでいようが100万円稼いでいようが保険料は変わりませんでした」(社会保険労務士の北村庄吾氏) 「標準報酬月額65万円に該当する人は、全体の6.5%の278万人と一番多い。本当はもっと高い保険料を払えるのに、上限の等級になっている高所得者が多くいるということです」(前出・井戸氏) 現在検討されているのは、上限を65万円から75万円、79万円、83万円、98万円のいずれかに引き上げる案である。
「現役世代1.2人で高齢者1人を支えることに」
「厚労省の最優先課題は年金制度の維持です。そのためには、より多く保険料を集めるのが手っ取り早い。『106万円の壁』の撤廃と同じ流れで理解するのがいいと思います」 北村氏はそう解説する。 「2055年には現役世代1.2人で高齢者1人を支える時代が到来するといわれています。年金制度は賦課方式を取っているため、その財源は主に、現役世代の会社員などが会社と折半して払う社会保険料と国庫負担などで成り立っています。現役世代1.2人で高齢者1人を支えることになると予測される中、この仕組みで対応できるのか。疑問を覚える方は多いはずです」