電線大手メーカーのSWCCは次世代材料である高温超電導線材の製造能力を2027年までをめどに約2倍に高めることを目指す。国家プロジェクトとして進める電動航空機関連の技術開発案件に対応することが狙い。同社ではすでに線材の性能・生産性を高める熱処理設備の開発機を導入済み。今後は他の工程の能力も開発機のキャパに合わせる形で増強して、ボトルネックを解消。全体としてのアウトプットを引き上げる考えだ。 　超電導線材は冷却すると電気抵抗ゼロで通電できる材料。細径でも大電流が流せることから、モータやケーブルなどの小型・高効率化への寄与が期待される。中でも高温超電導線材は超電導体としては高い液体窒素温度で電気抵抗がなくなる次世代材料。同社ではレアアース系の線材を研究開発レベルで手掛けており、その技術などを生かして今年度スタートした新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の「航空機向け革新的推進システム開発事業」に参画している。 　同事業は航空機の脱炭素化に向けた対応強化の機運が世界で高まる中、日本の技術優位性確保などのため行われる国家プロジェクト。SWCCはその構成メンバーとして、未来の技術である革新的な電動航空機向けの、超電導システムに関する技術開発に取り組む。電動航空機用のケーブルやモータ、発電機の研究に使われる高温超電導線材を確保するため、製造能力の増強を進める方針。 　同社ではかねてから電気を流す超電導層を結晶化する、本焼と呼ばれる仕上げ熱処理に用いる設備の新たな開発機を、相模原事業所（相模原市中央区）で導入している。開発機は連続的に加熱する方式で、温度制御がしやすいことが特長。新設備を生かし磁場の中で超電導状態で流せる電流値を上げるなど、線材の性能を向上させている。また生産性が高いことも新設備の利点。これまでに新設備で安定製造ができる体制を確立しており、今後は高性能化した線材の能力増強に向け、他工程も新設備の工程能力に合わせる形で強化する考え。複数種類の設備で増強を進めるなどして、高温超電導線材全体としての供給能力を引き上げる。