タテ読みマンガ…マンガ市場の新たな可能性【SENSORS】
■タテ読みならではの人気ジャンルは?
隙間時間に見つけて、気に入ったら一気に読む。少し見て興味がなければ離脱する。従来のマンガから消費行動が変化している中で、どのようなジャンルが人気なのか。山下さんに聞いた。 「話の内容として最近多いのは、弱かった主人公が強くなって敵を倒すとか、不倫の復讐モノなど、サクサク読めて読後にスカッとする作品です。最近では、女性向けロマンスファンタジーの人気も高まっています」 タテ読みマンガでは特定のジャンルのみが読まれる傾向があり、佐渡島さんは制作サイドとしてそこに難しさも感じているという。 「刑事モノやサスペンスのジャンルは、ドラマや映画、マンガで一定の人気があります。以前、そのジャンルで絵もかなり気合を入れたタテ読みマンガを作ったのですが、全然興味を持ってもらえなかったことがあります。この作品を出すときに、ジャンルをどうしようかすごく悩んだ。雑誌でマンガを出すときは、1雑誌の中で25など、ジャンルが被らないように編集部がバランスを取るのですが、タテ読みプラットフォームだと、アクションや異世界転生など、実質は4ジャンルくらいの中で読者に選んでもらうという仕組みになっています。そのジャンルとして違和感があると、読み続けてもらえない」 「興味を持ってもらえるかどうかが、ストーリーや絵の質と関係なかったりもします。タテ読みマンガは基本はアプリで読まれるので、アプリの中で話題になっているジャンルに注目がより集まりやすく、新しい物語のジャンルをどうやって話題にしてもらえばいいのか、模索中です」
アプリや特定のサービス内で完結しているため、社会とのつながりを感じられず、それがモチベーションにも影響していると続ける。 「社会と接続してないところでヒットがあるという感じが強くて、いくら読まれても世の中の話題につながる感じがありません。僕にとってコンテンツを作る楽しさって、コンテンツをきっかけに社会の空気を変えることだったんですよね。ですが、コンテンツのヒットと社会の空気が関係がなくて、とにかく売れそうなコンテンツを企画するということに、うまくモチベーションが湧かなくて。プラットフォームも閉じたヒットを作りたいと思っているわけではないので、同じ課題意識を持っていると思いますが、どうしたら打破できるだろうか課題意識があります」 プラットフォーム運営者として、課題感に山下さんも共感する。 「アプリ内で人気になった作品の名前を、タテ読みマンガを読んでいない人が知っているかというと、まだまだ追いついていないかと思います。超大ヒット作品、日本国民誰もが知っているような作品がタテ読みマンガから生まれてくると、もう一つステージが上がって、世の中に受け入れられることが増えるという期待感はあります」