運転免許返納どうする、高齢者の目的は「買い物」…「車なしの生活難しい」親に切り出す前に準備を
「運転が不安になった」などの理由で、運転免許証を返納した75歳以上の高齢者は、2023年は約26万人に上りました。一方、車を運転できないと買い物も病院への通院もできなくなるとして、返納しない高齢者も大勢います。あなたはどのように考えますか?
[A論]事故を起こす前に…買い物、宅配を利用
「人命に関わる事故を起こすのが怖かった」――。5年前に免許証を返納した千葉市の男性(85)は振り返ります。返納前、病院の駐車場でほかの車と接触したことに気づかず、警察官が診察室にまで来る事態になり、主治医から「あなたが私の父親だったら叱っています。返納しなさい」と注意されたこともあります。
返納後、買い物などは電動アシスト自転車で出かけるようになりました。「これ以上人に迷惑はかけられない」と、返納を後悔することはないそうです。
高齢者が免許証を返納するのは、この男性のように、高齢者の交通事故が実際に多いことが背景にあります。警察庁によると、75歳以上の運転者の死亡事故は2023年は384件で、3年連続で増加しました。免許証を持つ10万人当たりの死亡事故は5・3件で、75歳未満の2倍に上ります。事故原因はハンドル操作のミスや、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどが多く、身体能力や認知機能の衰えがうかがえます。
「高齢者の事故が多いから運転しないほうがいい」と娘に注意され、3月に返納したのは東京都八王子市の女性(77)です。外出の際は、運賃が無料になるシルバーパスでバスを使い、食料品などの買い物は宅配を利用していて、「運転しなくても生活できる」と話しています。
警察庁が15年、75歳以上の運転継続者と自主返納者計約3000人に行ったアンケートでは、運転の目的で最も多かったのは「買い物」でした。高齢者が免許証を返納できるようにするには、車がなくても買い物などができるように、移動手段の確保が必須です。
そのため、国は06年、自治体やNPOなどが住民を有償で自家用車で運ぶことを認める制度を作りました。国土交通省によると、この制度に登録し、高齢者が利用できるようになった車両は06年は約2000台でしたが、23年には約4400台にまで増えました。個人が自家用車で有償で人を運ぶ「ライドシェア」も、5月末時点で5都府県の一部区域で曜日や時間を限定して認められており、高齢者の移動手段は増えてきています。