小学生が延々と見続ける「ショート動画」のリスク…アメリカでは“大規模訴訟”が起きても「日本の規制は抜け穴だらけ」なのはナゼか
“野放し状態”
TikTokが先駆けとなって今はYouTubeからインスタグラム、Facebookまで、あらゆるプラットフォーマーがショート動画のサービスを強化している。我が子が長時間にわたってショート動画を見続けていることに不安を覚えている方だけでなく、大人でも無意識に長時間視聴してしまっていたという経験をお持ちの方も、少なくないのではないだろうか。 「何も考えずに、画面上の刺激だけをひたすら享受する時間が増えていては、人とのコミュニケーションや、思考力などにも影響は出てくるでしょう。“ショート動画全盛期”を過ごした子供たちがこれから社会に出てくる中で、問題はより顕在化していく可能性もあると思われます」 問題なのは、我が国ではこうした問題が実質的に“野放し状態”にあることだ。 「どのSNSも、13歳以上でないと使えなかったり、18歳未満には利用制限が設けられていたり、一定の規制はあります。しかし年齢認証は甘く、設定も比較的容易に変えられてしまうので、日本中の小学生が自由に利用しているのが実態なんです。SNSを利用した未成年の誘拐事件が相次いでいるのも、規制が形骸化していることの表れといえるでしょう」 そのリスクは、年齢認証が厳しい“あのアプリ”にも。 「日本資本が半分入っているLINEの場合、年齢認証が厳しく行われているのですが、ショート動画サービス『LINE VOOM』には一切の規制がなく、LINEさえインストールされていれば誰でも見られる状態が続いています。クラスLINEが当たり前のようにつくられている社会状況、あるいは親子のやりとりの必要性を考えてもアプリ自体を使わないわけにはいかない時代ですから、お困りの親御さんは本当に多いですね」
現実的な対策は
つまり、我が国でショート動画から子どもを完全に遠ざけることは、実質的に不可能だというのだ。 「欧米を中心に、世界では若者のSNS利用やショート動画に対する危機感は強く、法規制などもいち早く進んでいます。日本も近年、ネット上の中傷を厳罰化するなど対策を強めた分野もある一方で、表現の自由を重視するゆえか、SNSの利用自体に関する規制は後手に回っているのが現状です。ビジネス上大きな成功を収めているショート動画に、プラットフォーマー側が自らの意思で制限をかけることは考えづらいですから、日本でも法規制を含めて、対策を議論すべきでしょう。それだけ若者への影響は深刻化していると思うのです」 とはいえ、現状がすぐに変わるわけではない。10代の子を持つ親は、どのようにショート動画と向き合えばいいのか。 「先述の通り“抜け穴”はあるとはいえ、ペアレントコントロールなど、各SNSが設けている保護者による利用制限は、しっかり取り入れるべきでしょう。ただ、現実的な対策としては、親も子も、ショート動画の利用に対するリテラシーを高めることに尽きると思います。もちろん適度な時間の娯楽として楽しむ分には問題ないわけですから、長時間見続けることの危険性、デマ情報の多さなどについての理解を互いに深めることで、利用者側が安全に使えるよう意識していく。適切な規制を期待しつつも、我が子を守れるのは、今は親御さんしかいないのです」
デイリー新潮編集部
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