企業やNPOが対策に 深刻化する「若者の貧困」【WBSクロス】
WBSクロス、今回のテーマは「若者の貧困」です。都内で行われた生活困窮者向けの炊き出しではコロナ禍の2020年以降利用者は3倍以上に増えています。中でも20代・30代がおよそ15%を占めるなど「若者の貧困」が深刻化していて、NPO法人や民間企業が支援に乗り出しています。 東京・豊島区に訳ありの若者たちが集う場所があります。NPO法人「サンカクシャ」のオフィスです。サンカクシャの荒井佑介代表は「家に居場所がない、親と縁が切れてしまったような若者たちに安心できる場を提供している」と話します。 サンカクシャには様々な理由でつまずき、支援を必要とする若者が集まります。 「就職がなかなか決まらなくて生活保護を受けている」(24歳の利用者)
今、若者の貧困が問題になっています。男性の貧困率を比較すると、40年前は年齢が高くなるほど貧困率が上がっていましたが、近年はギグワーカーの増加など、様々な理由で若い世代の貧困率が高くなっています。 東京都立大学子ども・若者貧困研究センターの阿部彩教授によれば「特に今はいろいろな形態の働き方が増えてきて、必ずしも労働者として最低限の権利が守られないような働き方も増えてきている」といいます。 サンカクシャで働くスタッフの寺中湧飛さんがある場所を案内してくれました。 「ここがサンカクシャのシェアハウス。今6人、6部屋あって、それぞれ個室が割り当てられている」(寺中さん) サンカクシャでは住む場所のない若者向けに住まいの支援を行っています。シェアハウスの家賃は3万5000円(共益費1万円)です。 シェアハウスに1年半住むヤマダさん(仮名、23歳)は両親から虐待を受け逃げ出し、一時はホームレス生活を送っていました。去年1月にサンカクシャに助けを求め、ここで生活再建を目指しています。 この日、寺中さんはヤマダさんを誘ってある場所に行きました。やってきたのは、都内にあるカフェ。ヤマダさんはクッキーの袋詰めを手伝います。サンカクシャでは近所の店や企業に協力してもらい、若者が職業体験をする取り組みを行っています。こうした仕事体験を通して若者に自信をつけてもらい、社会復帰をサポートしています。 7月下旬。シェアハウスを訪れると、書類の準備をしていました。仕事体験などで自信をつけたヤマダさんが自立に向け、一人暮らしを始めることになりました。 「寂しい。急に一人になるので。相談しても共感してくれるサンカクシャはありがたい存在」(ヤマダさん) サンカクシャを頼る若者たちは、1~2年ほどでシェアハウスを卒業し、自立していきます。 「最初は顔色が暗くて、LINEでも『死にたいです』みたいなことしか言ってこなかった子が少しずつ顔色が明るくなったり、言う言葉も変わってきたりして、そういうのを見るとすごい成長したし自分自身もすごい刺激を受けた」(サンカクシャの寺中さん) しかしうまくいくことばかりではありません。寺中さんのもとに一本の電話がかかってきました。 「彼はシェアハウスに過去住んでいたが、こちらにも連絡なく退去していった」(寺中さん) 警察から、以前シェアハウスに住んでいた若者の行方を知らないかという電話でした。サンカクシャの手を離れたとしても、つまずき犯罪に巻き込まれる若者も少なくないといいます。