「俺はアトピー生まれニキビ面育ち、敏感肌なヤツはだいたい友達」さらつる革命スキンケアデイズ【坂口涼太郎エッセイ】
一度目の美容革命は、肌がきれいな親友のお母上の一言から!
そんな、かさかさ兼ぎとぎとなお肌で生きていたある日、親友のお母上に相談したら、「洗顔やめたら?」の一言が返ってきた。それまで私はニキビを治す為にはとにかく肌を清潔にするのがいいと思っていたので、メイクや日焼け止めをしていない日も欠かさず洗顔していたのです。 でも、親友のご家族はみんな肌がとってもきれいで、まあ遺伝もあるんやろうな、その遺伝子ちょっとくれ、とか思っていたけれど、「洗顔とか、うち基本的に子供の頃からせえへんで」というスタンスらしかった。 ちょうどその頃「肌断食」という言葉が世間に広まっていて、それまでのいかにケアするかというものから、自活力を高めようという新たな潮流が生まれつつあり、私にはその一言がより響いたのでありました。 20代中盤の私は毎日が暇で、映画館のアルバイトに行くか、自宅のホットカーペットの上で溶けているかのほぼ二択だったので、この外出する用事のない期間を利用して、用事が発生しない限り家から出ないで肌断食を実行しよう。そう決意して、洗顔料を使って洗顔しない、体もタオルなどでごしごし洗わない、化粧水や乳液などの化粧品も使わない生活を続けること10日間。最初の数日は顔を触れば消しゴムのカスのようにもろもろと何かが出てきて「このもろもろをずっと集め続けたらソフトボールぐらいの大きさになるんやろうか」と妄想しながらもろもろし続けていたのだけれど、後半の数日はもろもろもあまり出なくなり、ぴーんと突っ張って破けそうなほど乾燥して、ささくれみたいにがさがさだった皮膚も爬虫類の脱皮のようにめくれにめくれ、10日後にはジロリアンにはたまらない無限ちゃっちゃっちゃっちゃっ製造機でお馴染みの、私のテカりにテカってウユニ塩湖ぐらい世界を反射していた顔面から脂も塩湖も干上がって、「お母さん、おれが寝ている間におれの顔面に片栗粉まぶしてないよね?」と確認したくなるぐらい自分史において最もさらさら。さらさらって言葉や状態に馴染みがなさすぎて「私の人生にもついにさらさらが訪れたんですよね? さらさらの概念、私間違ってないですよね? この状態を皆さんさらさらとおっしゃっているんですよね? 広辞苑でも調べたので間違いないと思うのですが!」とすがるように世界に同意を求めたくなる幻のさらさらが現実に訪れて、「なんだああ、もっと早く教えてよおお! もっと早くにもろもろしとけばよかったああ!」とご近所をスキップしたくなるような清々しい気持ちになったのでした。