子ども2人目は「現実的に無理」…子育て世帯にのしかかる経済負担、かつてない勢いで進む少子化
「何かあっても大丈夫」と思える対策を
少子化に歯止めがかからない中、現役世代の負担が増加している。働いても「手取り」は増えず、先行きが不透明だからこそ、子どもに少しでも安定した将来を、と早期教育にお金をかける。子育て費用が増えれば、持てる子どもの数も減る。 余裕のない子育て世代の姿を見て、若い世代は子どもを生み育てることへのリスクを敏感に感じ取る。現在の負担と将来への不安が両輪となり、少子化を後押ししているようだ。 政府が「異次元の少子化対策」として打ち出した「こども未来戦略」の加速化プランは、財源の一部を全世代から徴収する「子ども子育て支援金」で賄う。児童手当拡充分などで子育て世帯に還元されるが、国会審議では支援金の徴収によって結婚、出産前の若い世代の可処分所得を減らすという指摘もあった。 これに対し政府は、医療介護の歳出改革で社会保険料の伸びを抑え、支援金分を捻出すると繰り返し説明した。だが、歳出改革の具体的な議論は進んでいない。歳出改革で高齢世代に「痛み」を負わせれば、現役世代の将来不安をあおりかねないという面もある。 少子化対策は目先の受益を得る層が限定されるために、世代間や子どものあるなしなどで分断を生みやすい。限られた財源の中で複数の政策を同時進行する必要があり、効果検証もしにくい。対策は待ったなしだが、結婚や出産が個人の自由意思に基づくものであるという大前提はゆるがせにできない。考えるほど、特効薬のない難しい課題だと感じる。 確かなことは、若者や子育て世代が「何かあっても大丈夫」と思える社会でなければ、安心して子どもを生み育てることはできないということだ。多方面に複雑な課題を抱えるテーマだからこそ、衆院選では威勢の良いスローガンだけでなく、生活者に寄り添った誠実な議論を望みたい。
この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。