子ども2人目は「現実的に無理」…子育て世帯にのしかかる経済負担、かつてない勢いで進む少子化
「こんなに取られているのか」社会保険料に絶句
生活費や教育費に加えて重くのしかかるのが、社会保険料の負担だ。ユキさんは過去の源泉徴収票を確認し、「こんなに取られているんだ」と絶句した。保育士としてフルタイムで働いていた22年は、年収約470万円から社会保険料が68万円天引きされた。夫の47万円を合わせると計115万円に上り、世帯年収の14%を占める。「年金などに必要なのは分かるが、こんなに取られると生活できない」とこぼす。 社会保険料は、被保険者と企業などの事業主が基本的に折半で負担し、健康保険や公的年金などに充てられる。主に子育て世帯を含む現役世代が保険料を負担し、高齢者を支える。少子高齢化で高齢者の人口割合が高くなると、現役世代の負担は増える仕組みだ。 総務省の家計調査によると、2人以上の勤労世帯における社会保険料の平均月額は00年の4万8019円から23年には6万6896円に増加。収入よりも社会保険料の伸びが大きく、勤め先からの総収入に占める社会保険料の割合は9%から12%に増加している。
負担軽減の恩恵は主に多子世帯
こうした中、岸田文雄前政権は「異次元の少子化対策」として23年末に3・6兆円規模となる「こども未来戦略」の加速化プランを策定。児童手当の拡充など子育て世帯の負担軽減を掲げ、財源には社会保険料の一部である公的医療保険料に上乗せ徴収する子ども・子育て支援金を充てる方針だ。高齢者も含め広く徴収するため、政府は「全世代で子育て世帯を応援する支え合いの仕組みだ」と強調してきた。 ただし、負担軽減の恩恵を受けられるのは主に多子世帯だ。児童手当拡充の中身は、所得制限の撤廃▽第3子以降への増額▽受給対象を高校生年代まで延長――で、これまで所得制限のあった高所得世帯と子ども3人以上の世帯以外にとっては、子ども1人あたりの支給増加額は高校3年間分の36万円にとどまる。加速化プランで掲げられた大学など高等教育費の負担軽減も、主に多子世帯が対象だ。ユキさんは「2人目すら迷うのに、3人なんてとても無理。一人っ子のままなら、この先恩恵を受けることはほとんどないかも」と肩を落とす。 選挙戦では各党が子ども・子育て支援策を公約に掲げるが、「政治とカネ」の問題が最大の争点となり、論戦は深まっていない。ユキさんは「子育て世帯が不安なく生活できるよう現実的な対策を打ってほしい」と訴える。