【SF Mix Voices 第8戦“事件簿”】「発進した瞬間に」「130Rも曲がれない」「効いたり抜けたり」
鈴鹿サーキットで行われた2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦。31周の決勝レースは途中に2度のセーフティカーが導入され、全21台のうち完走15台と最近では珍しいサバイバルレースとなった。 【写真】レース終盤に接触した大嶋和也(docomo business ROOKIE)と笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S) スタートからレース終盤までさまざまなトラブルやアクシデントが起きたが、ハプニングがあったドライバーたちにレース後のメディアミックスゾーンで状況を聞いた。以下、レースでの時系列に沿ってお伝えする。 ■岩佐歩夢(TEAM MUGEN):スタートできず まず最初の波乱となったのが、2番グリッドの岩佐がスタートでグリッドから動けず、最後尾まで後退。その後は必死に追い上げて9位入賞を果たした。 公式映像でも「ギヤが入らない!」と叫んでいたが、当時の状況について「映像でご覧のとおり、ギヤが入らなくてスタートできず、順位を落としました」と岩佐。 「詳しいことは話せないのですけど、説明で聞いている話だとギヤが入らないようになる制御が入っていたようで、ドライバー側から何をしてもギヤが入らない状態になってしまっていたので、一言でまとめるとトラブルです」とのことで、再スタート以降は問題なくレースを進められたという。 ただ、レースペースの面では課題が残った様子で「その後のペースも正直良いものではなかったので、全体を通して色々と見直さないといけない点があったのかなと思います。明日に向けて切り替えて考えたいなと思います」と岩佐。いつも以上に言葉少なめだった。 ■三宅淳詞(ThreeBond Racing):同じくスタートできず 同じようにスタートで立ち往生してしまったのが17番グリッドの三宅だ。こちらはわずかに動き出したものの加速できず、そのままコースのアウト側にマシンを寄せていた。 「まだクルマが帰ってきていないので、詳しいことは分からないですけど、ギヤが上がらなくなってしまいました」と三宅。 2速から上が入らないようで「1速には入ったんですけど2速に入らなくて……自分でもいろいろやってみたんですけど、上げられなかったです」とのこと。そのまま戦列復帰はできず0周でリタイアとなった。 「明日は当初雨予報でしたけど、ドライになりそうなので、今日走っておきたかったですね。それを言っても仕方がないので、明日に向けて気持ちを切り替えて戦っていければなと思います」と三宅。今季最終戦でどこまで挽回できるか注目だ。 ■小高一斗(KONDO RACING):シケインでコースオフ+走り出しから不具合 レース序盤の3周目。日立Astemoシケインで後方から追突される形でコースオフを喫した小高だが、その後ペースが上がらず2度にわたってピットイン。最終的に23周でリタイアとなった。 まず接触に関しては「僕が何か変な動きをしていたのかなと思ったのですけど、映像を見た感じは悪くなさそう。仕方ないといえば仕方ないです」と小高。ただ、問題はその後のペースだったようだ。 「自分のペースが遅すぎて、ぶつかった影響で『フロアに穴が空いているのではないか?』ということで、1回ピットに入って確認しました」 「そうしたらとくに問題がなかったので、そのまま(コースに)出ました。でも、ペースは良くなかったので……。もしかすると(外からは)見えないところが壊れているかもしれないということで、もう1度ピットに入って、そのまま止めました」 何かしらに不具合があるようだが、今週末の走り出しから症状が出ているようで、決勝では周りと比べても3秒ほど遅い状況が続いたという。 「本当にまともに走れなくて、130Rも全開で曲がれないくらい。ハンドルを切ったら勝手にリヤがスライドしていってしまう状況でした。今、原因を究明中です」と小高。予想外の苦戦に落胆した表情をみせていた。 ■佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING):タイヤ交換直後に左リヤタイヤ脱輪 2番手でレース序盤を進めていた佐藤。11周目にピットインしてタイヤ交換をして発進した瞬間に左リヤタイヤが外れるハプニングに見舞われた。そのまま佐藤はリタイアとなり、表彰台も見えていたレースだっただけにマシンを降りた後は悔しさを爆発させていた。 なお、65号車に対してはリリース時の安全確認不足で罰金5万円のペナルティが科されている。 「ジャッキが下りて発進した瞬間にタイヤが外れて、ピットレーンでクルマをコントロールするのが大変でした」と佐藤。動き出した瞬間にタイヤが外れたという状況だったようだ。 またレース序盤に関しては「太田(格之進/DOCOMO TEAM DANDELION RACING)選手のクルマは他の全車と比べても抜け出ていたのかなと思います。10周までには後ろは離せていたので、2番手か3番手くらいのポテンシャルかなと思っていました」と佐藤。 「5号車(牧野任祐)には最初迫られましたけど、途中からは離れていったので、おそらく36号車(坪井翔)の方が速かったと思います。ただ、ピットアウトしてそのまま(36号車を)抑えられていたら、2位で終えられたのかなと思います」と肩を落としていた。 ■「向こうが外側で姿勢を乱して」避けきれず ■大津弘樹(TGM Grand Prix):ステアリングトラブルでリタイア 19番手からスタートした大津だが、序盤からペースが上がらず。15周目にガレージにマシンを入れてしまった。その後20分弱ほど作業をしてピットアウトしたが、2周して再びピットへ戻り、そのままリタイアとなった。 「とにかくクルマが真っ直ぐに走らなくて……」と大津。どうやら、きっかけは10月の富士大会まで遡るようだ。 「前回の富士のスタートで大湯(都史樹)選手と当たったんですよ。そのあとペースが一気に落ちて苦戦しました。そこからいろいろ見直して今回来たのですけど、昨日の走り出しから真っ直ぐに走らなかったです」 「ハンドルを軽く握ったら、すぐに左側に取られてしまうくらい。アライメントはしっかり取ってもらったのですけど『おかしい』となりました」 そこから打てる手は打ってみたようだが状況は改善せず。「トルクセンサーのセンターが結構ズレていたようで、それも直してもらったのですけど、感じ取れるフィーリングが全然自分の思いどおりじゃなくて……コーナーひとつ曲がっているなかでも、アシストが効いたり抜けたり。決勝でもピットに戻ってECUもバッテリーも変えたのですけど、症状は直っていませんでした」と語った。 ■平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL):ピットアウト後に右リヤタイヤ脱輪 今回がスーパーフォーミュラ3レース目となる平良も序盤からさまざまなハプニングに見舞われていた。 「スタートでアンチストールが入ってしまって、その場で止まってしまいました」と平良。大きくポジションを落として後方から挽回していく。 「序盤は野田選手(Juju/TGM Grand Prix)がいたなかで、後ろにつくとダウンフォースが抜ける場面があって、すぐにオーバーテイクできなかったんですけど、前に出てからは『やっぱり』という感じでペースが良くて、前の木村(偉織)選手に追いつく状況でした」 その後は順調に走っていた平良だが、次なるハプニングが彼を襲う。18周を終えたところでタイヤ交換を済ませたが、ピットアウトした瞬間に右リヤタイヤが外れて走行不能となってしまった。 なお、外れたタイヤはコース上のレコードラインを転がっていき、2コーナーのクリッピングポイントで停止。これが原因でセーフティカーが導入された。 「アクセル全開でピットリミッターを切ったら恐いので、(アクセル開度を)真ん中くらいにしてリミッターを切りました。その瞬間にリヤがスライドして『タイヤが全然温まっていない! 怖いな」と思いながら走ったら、タイヤが外れていました」 「(原因については)検証中です」と平良。最後まで走れなかった残念さもあるが、予選と決勝のペースについて課題を感じている模様。 「ステイアウトしていた坪井選手や大湯選手のタイムも聞いていましたけど、(ふたりと比べると)全然良い方で、決勝の良さと予選の悪さのギャップがあるので、その要因をちゃんと整理整頓しないと本当の強さにつながらないなと思います」と語った。 ■笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)と大嶋和也(docomo business ROOKIE):スプーンカーブで接触 2コーナーのタイヤが撤去されてセーフティカーが解除されたが、24周目のスプーンカーブで大嶋と笹原が交錯するアクシデントがあった。 「OTS(オーバーテイク・システム)を使ってスプーンの外側から追い抜こうと思っていました。ちょうどタイヤも交換した後だったので、自分のグリップを信じて『もうちょっといけるかな?』と思っていきました」 そう語るのはオーバーテイクを仕掛けた笹原。スプーンひとつ目で追い抜けたかに見えたが、「(追い抜いた時に)接触はなかったのですけど、僕が思ったより外のラインにいて、ラインと縁石に弾かれてしまってコントロールを失ってしまいました」とのこと。 「なんとか立て直そうとした際に接触してしまいました。そこは完全に僕のミスだったと思います」と落ち込んだ様子だった。 その後、ピットに戻ってフロントノーズを交換し戦列に復帰。トップから1周遅れの15位でレースを終えた。 一方の大嶋は、当時の状況をこのように説明している。 「笹原選手がヘアピン立ち上がりからOTを押してスリップに入って並びかけてきました。僕はその時OTが押せない状況でしたし、向こうはタイヤが新しかったので、抑えるには厳しいかなと思っていました」 「そうしたら向こうが外側で姿勢を乱していたので『スピンするな』というのが分かって、内側にラインをずらしました。避け切れたかなと思ったんですけど、後ろが当たって駆動がつながらなくなってしまいました」 駆動がかからなかったこともあり、大嶋は西ストレート脇にマシンを止めてリタイア。今季初ポイントのチャンスが見えていただけに、落胆の様子だった。 こうして最初から最後まで波乱続きとなった第8戦決勝。日曜日の第9戦は、シーズンを締めくくるレースに相応しい波乱の少ないクリーンな展開になることを切に願いたい。 [オートスポーツweb 2024年11月10日]