約2000万人が悩む国民病「腰痛」の原因とは?自宅で出来る予防策とセルフケア【専門医からの提案】
“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。日本人の約2000万人が腰痛を訴えています*。女性の不調の自覚症状のランキングでは、1位は肩こりですが、2位が腰痛です。なぜ、女性は腰痛に悩みやすいのでしょうか? 女性の腰痛対策を女性のヘルスケアに詳しい整形外科医の青山朋樹先生に伺いました。 *国民生活基礎調査(2016年) 〈写真〉約2000万人が悩む国民病「腰痛」の原因とは?自宅で出来る予防策とセルフケア ■多くの腰痛は、筋肉や筋膜の不具合が原因 腰痛が国民病と言われるほど多く、しかも20代~40代の若い世代の女性にも多いのは、なぜなのでしょうか? 「背骨(脊柱)の構造は、骨、軟骨、椎間板などの硬い組織と、その周りにある筋肉、筋膜、靭帯などの軟部組織からできています。骨や軟骨の不具合で起こる痛みは、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、骨折などの病気によるものが多いのですが、若い世代に起こる腰痛は、骨の不具合というよりも、軟部組織である筋肉や筋膜の不具合によって起こる人が圧倒的に多いです」と青山朋樹先生。 腰痛を原因別に分類すると、腰部脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアなどのように画像検査や血液検査で原因を特定できる腰痛は、全体の約10%。残りの約90%は、原因を特定しにくい非特異的腰痛と言われる筋肉、筋膜が固まって、機能が低下することによる腰痛です。 「非特異的腰痛は、生活習慣や姿勢などに問題がある事が多く、原因がわからない腰痛とか言われてしまうのです。これらの腰痛の多くは、生活習慣の見直しやセルフケアで、予防したり、ある程度改善することが可能です」(青青山先生) ■姿勢が悪いから腰痛になりやすい 腰痛の原因がはっきりわかれば、自分で予防したり、改善したりすることができます。病気が背後に隠れていない腰痛が起こる原因として、多いのはなんでしょうか? 「腰痛の場合、脊柱の骨のアライメント(配列)が自然なS字カーブを描くようないい状態になっていれば、痛みは起こりません。猫背などの悪い姿勢でアライメントが崩れてしまうと、周りの筋膜や筋肉が引っ張られて痛みやこりへと繋がるのです」(青山先生) 腰痛は、ひと言で言えば、“姿勢が悪い”ことが原因なのです。正しい姿勢かどうかは、まず、正面から鏡で見たときに、左右差がないかをチェックします。左右のバランスが悪く、どちらかが引っ張られるような不適切な姿勢も原因になります。左右差は、肩の高さに違いがないかを鏡で見るとわかりやすいです。原因は、骨盤の歪みのこともありますし、脊柱の歪みのこともあります。また、前後の骨盤の傾きが正しい位置にあるかどうかも大切です。反り腰でも、前屈みの猫背でも、よくありません。これらの姿勢チェックは、壁に背をつけて立って見るとわかります。チェックしてみてください。 【姿勢チェック】 後頭部、肩、お尻、ふくらはぎ、かかとの5点が普段の姿勢で、自然に壁につけて無理なくキープできますか? 無理につけようとしないとつかない、ついたとしても疲れて長く耐えられないなどは、骨盤が前か後ろに傾いている証拠です。 腰痛の背後に病気が隠れている場合は姿勢の歪みによる腰痛ではなく、20代~40代の女性が特に気をつけるべき腰痛を起こす病気もあります。 「歯のかみ合わせの不良、目の疲れ、ストレス、不安などのメンタルから来る腰痛もあります。また、若い人でももちろん、頸椎や腰椎の椎間板ヘルニアの場合もあります。多くはないですが、腰に強い痛みが長引いている場合は、子宮がんなどの疑いもないとはいえません。また、閉経以降の女性の場合は、狭心症や心筋梗塞、脳動脈瘤の可能性もゼロではありません。長く続いている痛みは、整形外科を受診してください」と青山先生。 ■腰痛改善には、血行をよくすることが大事 「背後に病気がない場合、腰痛が起こる前には、筋肉が硬くなって、こわばりが出ます。頭は5キロもあるので、重たい頭を支えている脊柱のバランスが悪くなると、周辺の筋肉がこわばって緊張してしまいます。痛みやこりがひどくなる前に、マッサージをしてあげましょう。ぎっくり腰や寝違えの予防にもなります」(青山先生) 筋肉がやわらかく柔軟で、伸び縮みしているときは、腰痛は起こりません。筋肉が緊張して硬く、血行が悪いときに、腰痛のアクシデントが起こりやすいのです。腰痛が起きてしまったときの対処法で、温めていいのか、冷やしたほうがいいのか、迷います。 「血行がよいほうが腰痛は起こりにくいので、入浴などで温めることは大切です。副交感神経が優位になって、リラックスできることも予防に繋がります。ウオーキングなどの適度な有酸素運動もいいでしょう。反対にストレスがあって交感神経が優位になると、血流が悪くなって、腰痛に繋がります」(青山先生) やわらかい筋肉を維持するために、血行をよくすることは大切。血行を良くするためにも、マッサージや入浴、適度な有酸素運動で、こまめに腰痛予防に励みましょう。 ■■お話を伺ったのは…青山朋樹(あおやまともき)先生 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 専攻長 医学博士。群馬大学医学部医学科卒業。京都大学医学研究科博士課程。京都大学医学部附属病院整形外科ほかを経て現職。専門はリハビリテーション医学、整形外科学、再生医学。運動を用いた健康アプローチとしてのトレーニングをウィメンズヘルスのほか、幅広い分野で研究している。 取材・文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
増田美加