【西田宗千佳連載】大幅改善のiPad Proに見える「価格のジレンマ」
Vol.139-1 本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは新たに登場したiPad Pro。性能が大幅に向上した一方、円安の影響もあり価格が上昇した。新モデルの価値はどこにあるのか。 今月の注目アイテム アップル iPad Pro 16万8800円~(11インチ) 21万8800円~(13インチ)(※) ※ いずれもWi-Fiモデル
有機ELを用いることで軽さと薄さを実現
アップルが5月に発売した「iPad Pro」は、同社としては久々に大幅なハードウェア変更となった。 特に大きな変化があったのは13インチモデルだ。面積はほとんど変わっていないが、厚みは6.4mmから5.1mmと一気に薄くなり、重量も684gから582g(ともにWi-Fi+セルラーモデル)へと軽くなった。手にしてみると差は歴然としており、過去のモデルに戻るのが難しく感じるほどだ。 新しいiPad Proが薄く・軽くなったのは、ディスプレイが有機ELになったためだ。 一般論として、有機ELは液晶に比べ構造がシンプルで、薄くて軽い製品を作りやすい。スマホで有機ELが主軸になってきたのはそのためでもある。ただ、液晶に比べ輝度を上げづらい、という難点はある。 先代の12.9インチ版iPad Proは小さなLEDを並べてバックライトにする「ミニLED」を採用していた。ミニLEDは明るさとコントラストを向上させやすい一方、構造的に厚くなりやすい。有機EL採用によって最新の13インチモデルが劇的に薄く・軽くなったのは、「明るさをミニLED以上にしつつ、有機ELを採用する」ことができたからでもある。 この新型iPad Proでは一般的な有機ELではなく、「タンデムOLED」というディスプレイパネルが採用されている。これは通常1枚である発光層を2枚とし、組み合わせて光り方をコントロールすることで、平均的な輝度を上げつつ、軽くて薄い製品を作れたわけだ。 画質的にももちろん有利になる。なお11インチ版iPad Proも有機ELを採用しているが、こちらは過去のモデルでもミニLEDを使っていなかったので、そこまで薄く・軽くはなっていない。そのぶん画質については、13インチ版以上に進化を感じられる。