【解説】保護者による「再調査要請」で発覚…世田谷区保育士“虐待”事件 ハワイで“虐待の真実”のため闘う母は
もし保護者が再調査を求めなかったら…
区が6月17日時点でまとめた資料には「保護者が訴えた5月9日とは別の日である、5月7日に虐待行為があったことが確認された」と結論づけられている。この文章は、「保護者が虐待の日付を“勘違い”したため、最初の調査で虐待行為が確認できなかった」と読み取れる可能性がある。 しかし、警視庁が立件した佐久間容疑者の逮捕容疑は「5月7日に髪を引っ張ったり、腕を強く引っ張る行為』と「5月9日の昼寝の時間に足で踏みつけるしぐさ」だった。つまり、7日・9日「両日」だったのだ。保護者が当初訴えた、「5月9日」は保護者の勘違いなどではなく、警視庁が「両日」の虐待の行為を確認し、立件に至ったと言うことでる。 世田谷区がまとめた経緯資料の「5月9日は確認できなかった」と回答したことは、どういう意味を持つのか。もし保護者が再調査の依頼をしなければ、被害園児、もしくは別の園児への虐待行為は続いていた可能性もある。
ハワイの保育施設でも虐待 家族が見た75時間の映像
保護者が何度も声を上げなくては、明るみに出ない保育施設での虐待行為。日本から遠く離れた海外でも似たケースがあった。 アメリカ・ハワイに当時住んでいた、ケイト・クケンダルさんは、2022年、1歳半(当時)の娘のイザベラちゃんの体に複数のあざがあるのを見つけた。イザベラちゃんがその保育施設に通い始めて間もない頃だった。 ケイトさんは警察に訴え出たが、当局は「証拠が揃っていない」などの理由で、捜査に動かなかったという。証拠を集めるため、家族は園の防犯カメラ映像を要求。その後「閲覧」が認められ、75時間にわたるビデオを家族自ら視聴し、確認した。そこには、イザベラちゃんは保育園のスタッフに、体をつねられ、たたかれ、激しく揺さぶられるなどの数々の虐待行為が記録されていた。さらに、虐待は複数のスタッフによるものだった。 しかし当初、防犯カメラは家族にすら提供が許されず、家族が75時間分の「閲覧」して記録を取り、書類を作成するなどの作業を重ね、捜査を開始するよう当局に働きかけた。結局、捜査に動きだすまでには半年もの時間がかかったという。その後、今年に入って、2人のスタッフの女が訴追され、禁錮刑を言い渡された。女らは裁判で、「人手が足りなかった」「イザベラちゃんが泣き止なかった」などと述べた。