28歳でタオル工場を継いだ6代目の挑戦 職人の創意工夫を引き出した生産体制づくり
職人の急逝も乗り越えて
販路も製造体制も整え、市場に投入しようというタイミングで、想定外の出来事が起こりました。 開発を進めてきたベテラン職人が末期がんだったことがわかったのです。次期工場長の候補にもなっていたほど頼れる存在でしたが、病気の判明から1カ月ほどで亡くなりました。 直後は途方に暮れていた神藤さんは新たにタオル職人を採用することにしました。当時の工場長はインナーパイルの製造にほぼかかりきりで新商品にまで手が回らず、また一から職人を育成していては時間がかかり過ぎると判断したのです。 幸い、長年タオルづくりに携わっている泉州のベテラン職人を見つけることができ、2.5重ガーゼタオルの安定生産体制を何とか作ることができました。 2011年に発売した2.5重ガーゼタオルは、ふんわりと柔らかい独特の肌触りでヒット商品になりました。今ではインナーパイルなどとともに主力商品となっています。 昭さんの後を継ぐ前後から、ベテラン職人たちの発想と技術力を引き出して新商品を開発したり、従来の問屋に頼った商流だけではない販路を開拓したりした神藤さん。そしてさらなる挑戦にも意欲を見せています。 「2.5重ガーゼタオルもインナーパイルも、職人の長年の知見と発想、創意工夫を生かすことで生まれたと言えます。これからも先代の『新しいことをやる』という遺訓を胸に刻み、従来の発想にとらわれないで人々に愛される商品づくりに挑戦していきたいです」 ※後編では、神藤さんが自社ブランドを立ち上げて、有名店や海外などに販路を広めながら、会社を利益体質へと変えていったプロセスを掘り下げます。
ライター・編集者 中村信義