部下との関係性と成長を両立するマネジメント術 「優しさ」と「厳しさ」の適切なバランスとは?
たしかに「褒めて伸びる人」もいれば、「叱られて伸びる人」もいる。したがって、「褒める」のも「叱る」のも簡単なことではない。だが、上司にとってみればとくに頭が痛いのは後者に付随する「厳しさ」ではないだろうか? そこで今回は、その点に関する著者の考え方をクローズアップしてみたい。 ■「厳しさ」を持つべき3つの働きかけ 部下を育てる過程においては、当然ながら「厳しさ」が求められるときもある。とはいえ「叱る必要があるから叱る」だけの話であり、日ごろから「厳しく叱りたい」と思っている人はおそらくいない。
だからこそ精神的に負荷がかかるわけだが、上司としての責任を考えると、やはり叱るしかなく、そこが難しいのだ。 なお著者は、部下の問題行動を変えるには、3つの働きかけがあると考えているそうだ。 (1) 叱る (2) 注意する (3) 指摘する (19ページより) いうまでもないことだが、厳しく叱っていいのは、重大なリスクを相手が軽んじているときのみ。単にリスクがあるだけなら言って聞かせればいいだけのことだが、そのリスクの重大性を理解せずに軽視している場合は、厳しく叱る必要があるということだ。そういう場合は、いったん相手の思考を止める必要があるのだから。
たとえば、子どもが急流の川に近づいたとしよう。そんなとき「危ない! 近づくな!」と注意しても「大丈夫!」だと言って聞かないとすれば、大声で叱らなければならない。子どもは驚いて泣き出すかもしれないが、命には代えられないからだ。 では、社会人に対して「厳しく叱るべきタイミング」とは? (1) 取り返しのつかないことが起こるリスクを軽視しているとき (2) 「当たり前の基準」が下がるリスクを軽視しているとき
(20~21ページより) まず(1)だが、このことを説明するために、著者は自身の30年以上前の自身のアルバイト体験を引き合いに出している。 高級レストランのホール係として結婚披露宴の準備をしていたとき、4枚の皿を一度に運ぼうとして、シェフに「心を込めて作った料理を、そんなふうに持っていくな! 料理が崩れたら、どうするんだ!」と激しく叱られたというのだ。 ウエイター経験が長かった著者は、4枚の皿を一度に持って運ぶことに慣れていた。そのため、「絶対やるな」と注意されていたにもかかわらず、忠告を無視した。お客様のために早朝から料理していたシェフの気持ちを考えていなかったため、厳しく叱られることになったわけだ。