「窪田正孝の真価が惜しみなく発揮される」秋ドラマ最注目『宙わたる教室』監督が明かす制作の裏側と見どころ
【『宙わたる教室』制作陣インタビュー 第2回】 定時制高校の科学部を舞台とした窪田正孝主演のドラマ10『宙わたる教室』(NHK総合、火曜22時ほか)が好評だ。「秋ドラマナンバーワン」という声もある同作だが、実はスタート前は演出面の不安も少々あったという。 【写真】『宙わたる教室』の夜の学校風景は昼間に撮影していた! 「『宙わたる教室』は夜の学校が舞台ですから、全体的に暗い印象の作品になってしまうのではないかという不安がありました」 チーフ監督で第1~4話、9、10話演出担当の吉川久岳氏はそう振り返る。 『宙わたる教室』制作陣へのインタビュー第2回となる本記事では、第1回に続いて監督の吉川久岳氏と一色隆司氏に、ストーリーが練られた過程や撮影のこだわり、終盤の見どころについてお話を伺った。
定時制高校を取材してつかんだもの
当初、前述の不安を抱えていた制作陣にとって作品づくりの土台となったのは、原作である伊与原新氏の同名小説、そして準備段階で定時制高校を取材した経験だった。ともすれば暗く地味な印象になりかねない作品に、こうした取材に基づく人間ドラマのリアリティが彩りを添えていく。 「体育の授業を見学させてもらったのですが、その時、大人しそうな小柄な女の子と、派手な格好の女の子がペアになってバレーボールをやっていたんです。最初は少しぎこちない感じだったのですが、次第にふたりとも笑顔が増えていって。その姿がとても印象的でした。この場だからこそ出会えた2人なんだろうなぁと。パッと人目を引くような派手な出来事は無いかもしれない。しかし、夜の学校だからこそのドラマがちゃんと生じているのだろうなと感じました。 そうした取材でつかんだものを念頭に、実際の学校とつながる何かが映像にあらわれているかどうかをずっと考えながら撮っていきました」(吉川氏)
夜の学校風景は、実は昼間に撮影していた
回を重ねるごとにそれぞれのキャラクターや距離感、人間関係が見えてくる。それは例えば教室の座り位置からもわかる。 「距離感はすごく大事だなと思っていて、 1人1人に設定を作り、この人はこの辺りに座るかな、あの人との距離が近いかななどと考えて配置を決めました。クラスメイト全員になんとなくの定位置がありつつ、後半になるとちょっとだけ座り位置が変わっています」(吉川氏) 例えば質問魔の長嶺(イッセー尾形)が最前列にいて、真面目かつムードメーカーのアンジェラ(ガウ)も前で、おとなしめの子たちが真ん中あたり、岳人(小林虎之介)は一番後ろのほうだが、自身が発達性ディスレクシア(識字障害)らしいと知ってからはタブレットを使い、読み上げ機能で補いながら授業に向き合っている。 また、「夜の学校風景」のルックは特に力を入れた点だ。 「画面をどういうルックにしようかということは、カメラマンの三村さんと早めに話をしていて。夜の学校ってそもそも難しいんですよね。蛍光灯の下ではすごくフラットな印象になってしまうことと、カーテンを閉めなきゃいけないという撮影上の制約があって。 そんな中でしっとりと落ち着いたトーンで、温かみも感じるルックにするためにどうすればいいかというのは、過去の映画などの作品も参考にしながら決めていきました」(吉川氏) しかも、基本的に夜の学校が舞台だが、実は夜ではなく昼間に撮影をしていると言う。なぜなのか。 「生徒役の中には16歳の方もいるので、夜の撮影ができないんです。それで、教室のシーンはもちろんのこと、全ての場所に黒い遮光ビニールをかけて撮影しました。そうした状況の中での撮影はとても大変だったのですが、照明の中村さんと、カメラマンの三村さんが密にコミュニケーションを取りながら魅力的な光を作ってくれました」(吉川氏)