「窪田正孝の真価が惜しみなく発揮される」秋ドラマ最注目『宙わたる教室』監督が明かす制作の裏側と見どころ
監督、脚本家らで毎回4~6時間議論
ドラマでは、全10話のうち第4話までは原作1章ずつをベースに、生徒 1人ずつにフォーカス。藤竹が一体何者なのかをミステリアスに見せつつ、藤竹が生徒たちを救っていき、藤竹自身も成長していく展開が描かれた。第5話と7話、8話の一部がオリジナルエピソードとなっており、それらを監督の一色隆司氏が担当した。 1章ずつ各生徒の視点によって描かれていく原作と比べて、ドラマでは窪田正孝扮する主人公の藤竹を物語の中心に据えているために、原作より藤竹を描くボリュームが増えているが…… 「そこは脚本の澤井香織さんも一番苦労されていて、藤竹側のストーリーが原作では第6章の1話分しかないので、藤竹がどう思っているのかなどは本打ち(台本の打ち合わせ)で一番議論になるところでした。 このとき、藤竹は何を考えているのか、何をしているか、裏ストーリーを全部組み立てた上で脚本を書いていただいたので、監督全員が共通認識を持てて良かったのですが、脚本作りに時間はかかりました。脚本の打合せでは毎回4時~6時間議論を重ね、それぞれに思っている藤竹像を出し合い、澤井さんがそれを集約していく感じでした」(吉川氏) 原作では、第6章以外は他者の視点で藤竹が描かれているが、全話を通して藤竹自身の成長もきちんと描かないといけないのではと一色監督が言い出したことで、裏設定も含めて藤竹像についての議論が進み、物語のレイヤーがもう1つ増えたと言う。 「藤竹を既存の学園モノの先生にしたくない、だからといって何か企んでいる人に見えるとチープになるので、前半は余り感情を見せないようにしているわけですが、窪田さんはご自分の中にきちんと『藤竹はみんなの月だから、みんなの思いが跳ね返っていく中で、自分も知らず知らずのうちに変わっていく』というビジョンを持って役作りをしているんですね。 “自らの実験”と言って始まった物語が、いつの間にか想定と違った場所に科学部のメンバーも、そして藤竹自身も来ていた――そうなるといいなと思っていますが、それが視聴者にどう受けとられるのかはドキドキする部分ではあります」(一色氏) 藤竹の人間的な面と共に、なぜ定時制高校に来たのかも見えてくる終盤。芝居の上でもずっと抑えてきた藤竹の思いが徐々に浮かび上がってきて、俳優・窪田正孝の真価が惜しみなく発揮されるという。