[特集/海外組100人超の時代がやって来た! 欧州サムライ勢力分布 02]メガクラブで光るサムライたちの武器とは?
遠藤に求められるのは前方に運ぶ&得点に絡む力
負傷で出遅れている伊藤、冨安とは異なり、リヴァプールの遠藤航は新たに招聘されたアルネ・スロットが志向するスタイルのなか、先発ポジションをライアン・グラフェンベルフに奪われている。昨季までの[4-3-3]から[4-2-3-1]へと中盤が変化し、ボランチは開幕からグラフェンベルフとアレクシス・マクアリスターが務めている。トップ下にドミニク・ショボスライで、アンカー+インサイドハーフ2枚だった昨季から三角形が逆になっている。 遠藤航がアンカーを務め、ショボスライ、マクアリスターのインサイドハーフ。この3名は連携が良く、中盤で相手ボールを奪う→攻撃に移行するというのが素早くできていた。スロットはここに修正を加え、第1節 イプスウィッチ戦(2-0)、第2節ブレ ントフォード戦(2-0)、第3節マン チェスター・ユナイテッド戦(3-0)に いずれもクリーンシートで勝利するこれ以上ないスタートを切っている。 3連勝するなか、遠藤がピッチに立ったのはブレントフォード戦の91分からで他の2試合は出場機会がなかった。イプスウィッチ戦、ブレントフォード戦はどちらもボールを保持して最後まで点を取りにいっており、疲労してきた3トップが優先して交代されている。ブレントフォード戦で のグラフェンベルフ→遠藤も疲労を考慮してのものだった。残り時間は 少なく2点差があり、遠藤を入れて 守りを固めるというほどの交代ではなかった。 マンU戦は50分過ぎに3-0となり、中盤の守備を引き締めてショートカウンターで追加点を狙うなら遠藤投入もあるかと考えられたが、スロットには受けに回る、守備的にいくという意識はなく、前線の3人と両SB という攻撃で足を使うポジションの選手が交代され、攻撃の強度を落とさない選択が取られた。そして、遠 藤はベンチに座ったまま試合終了のホイッスルを聞いた。 このマンU戦ではグラフェンベルフ、マクアリスターともに中盤でボールを刈り取り、素早いトランジションで得点にからむ仕事をしている。35 分の先制点はグラフェンベルフが相手パスをカットし、そのままダイナミックなドリブルで前方へ運び、絶好のタイミングで右サイドのモハメド・サラーにパスを出した流れから生まれている。 41分の追加点は相手陣内でリヴァプールが強度の高いプレスを仕掛け、ルーズボールとなったところを的確なポジションを取っていたマクアリスターが拾い、すぐに前線の ルイス・ディアスへ縦パスを入れる。ルイス・ディアスが右サイドのサラー に散らし、ゴール前に走り込んでリターンパスをダイレクトでゴールに流し込んだものだった。 スロットが遠藤に求めるのは、こうしたプレイになる。中盤で強度高く プレイしてボールを奪うだけでなく、自分で前方へ運ぶ。あるいは効果的かつ決定的なパスを出す。いまは 起用が少ないが、スロットは遠藤について問われると「遠藤も重要な戦力だ」と常々答えている。出場時間はともかく、今後もピッチに立つ機会は必ずある。いざ監督から声がかかったときに、いかに いまのリヴァプールのなかで求められるプレイができるかが大事だ。そ のことは経験を積み重ねてきた遠藤自身が一番わかっていると考えら れる。今季もマンCと優勝争いを繰り広げそうなリヴァプールのなかで、いかに存在感を出していくか。ここからのパフォーマンスが逆に楽しみだ。スロットのもと、さらに一段階レベルアップした選手になるかもしれない。 文/飯塚健司 ※ザ・ワールド2024年10月号、9月15日配信の記事より転載
構成/ザ・ワールド編集部