[特集/海外組100人超の時代がやって来た! 欧州サムライ勢力分布 02]メガクラブで光るサムライたちの武器とは?
冨安が両SB&CBで稼働すればアーセナルは組合せが増える
アーセナルに加入してからの冨安健洋はケガが多い。昨季はふくらはぎを2度に渡って痛め、トータルで約2カ月プレイできなかった。良いスタートを迎えたかった今季もシーズン前にヒザの負傷が判明し、プレシーズンのツアーに参加することができなかった。現状、伊藤と同じく復帰時期は未定だ。 冨安がアーセナルのなかで出場するとしたら、これまで起用されてきた左右のSBとなる。ただ、右にはベン・ホワイト、左にはオレクサンドル・ジンチェンコ、ユリエン・ティンバーなどがいて、コンディション万全でもレギュラーポジションを掴むこと が難しいのが現状である。 監督就任6年目を迎えたミケル・アルテタは時間をかけて[4-3-3] を磨いてきた。第1節ウルブズ戦(2-0)の最終ラインは右からホワイ ト、ウィリアム・サリバ、ガブリエウ・マガリャンイス、ジンチェンコ。第2 節アストン・ヴィラ戦(2-0)はホワイ ト、サリバ、ガブリエウ、ティンバーで、第3節ブライトン戦(2-2)も同じ4 名だった。 変化があったのは左SBのポジションだけで、右SBのホワイトは3 試合にフル出場となっている。まだ 3試合だが、冨安は復帰したならホワイトの負担を軽減する役割が求められる。途中出場、またはホワイトを休ませたいときに先発を務める右SBのバックアッパーという感じになる。 ただ、相手のウインガーを通行止めにする対人守備の能力では、ホワイトをも凌ぐかもしれない。冨安は過去に何度もその粘り腰の強い守備によって、モハメド・サラー、ソン・フンミンといったプレミア屈指のウインガーたちを封殺してきた。状況や対戦相手によっては、冨安の方が先発に選ばれることもあるだろう。 無論、冨安はCBでも稼働できる。現状、サリバとガブリエウは最終ラインに欠かせない2人となっているが、試合数の多さを考えればどこかでターンオーバーが必要になってくる。リッカルド・カラフィオーリをボローニャから獲得したが、代表戦で負傷した。そうなると、ヤクブ・キヴィオル、ホワイト、ティンバー、そして冨安などがCBの候補として名前があがる。 ホワイトは右SBで定着しているが、数年前は冨安が同ポジションを務め、ホワイトがCBという布陣が通常だった。ガブリエウ&ホワイトのCBコンビは強固でビルドアップも正確だった。サリバ&ガブリエウのファーストチョイスに、ホワイト、冨安、カラフィオーリなどを加えたCBのセットが組めるようになればアーセナルはよりチーム力を増すことになる。 離脱期間が長い冨安に不安が あるとすれば、一緒にプレイした時間が短い選手たちとの連携になる。デクラン・ライス、カイ・ハフェルツ とのプレイ時間をもっと増やしたいし、今季加入したラヒーム・スターリ ング、ミケル・メリーノといった選手 とも連携を深めたい。 昨季はプレミアリーグで先発10試合、途中出場12試合だった。全38試合中22試合の出場で、アーセナルに加入してから3年でもっとも多くの試合に出場した1年になっ た(過去2年は21試合)。持っている能力の高さはすでに知られていて、監督やチームメイトからの信頼も得ている。負傷離脱した期間がなければ、この数字はもっと増えていたはず。コンディションを整え、ピッチに戻ってくる。そして、左右のSBだけでなく、ときにCBでプレイして勝利に貢献する。すべての大会で優勝を狙うアーセナルのなかで、複数のポジションを任されて活躍する。今季はそんな冨安の姿が見たいが、8月下旬に現地メディアが「練習を再開している」と報道している。いつ復帰するかは未定ながら、確実に “そのとき”は近づいている。