「山場となるのは第36節」残り4節となったJ1リーグ優勝争いのポイントを福西崇史が解説
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第110回のテーマはJ1優勝争いについて。今季のJ1も残すところ4節。優勝を争う広島、神戸、町田の3クラブの現状と、優勝争いの行方を福西崇史が解説する。 * * * ■ACL組が厳しい過密日程をどう切り抜けるか ――今季のJ1も残り4節となり、優勝争いは1位のサンフレッチェ広島(勝点65)、2位のヴィッセル神戸(勝点64)、3位のFC町田ゼルビア(勝点60)の3クラブに絞られた様相です。優勝争いのポイントはどこにあると思いますか? 福西 やはりスケジュールだと思います。広島と神戸はリーグと並行してAFCアジアチャンピオンズリーグがあり、神戸は天皇杯もあります。それに対して町田はリーグのみ。この日程の差がこのラスト4試合でどう出るかですよね。 広島はアウェイのシドニーFC戦のあと中2日でアウェイの浦和レッズ戦、さらにアウェイのカヤFC戦のあと中2日でホームの北海道コンサドーレ札幌戦と続く。アウェイのACLのあとリーグ戦はかなり厳しいと思います。しかも次節の京都サンガF.C.も含め、残留争いをしていてモチベーションも高い相手が続くのは、さらにやりづらいでしょうね。 ――神戸は天皇杯決勝に進出して、より日程面で厳しいですね。 福西 まずアウェイの蔚山HD戦、天皇杯の京都戦を戦って次節のジュビロ磐田戦。天皇杯決勝から中2日でホームのセントラルコースト・マリナーズ戦、さらに中3日で柏レイソル戦と、3つのコンペティションが続くこの2戦は心身ともにかなり負担がかかると思います。神戸は経験豊富な選手が多いので、この厳しい日程のなかでチームのリズムや士気をベテランがどうコントロールし、補っていくかがポイントだと思います。 リーグに専念できる町田は大きなアドバンテージといえますが、直近4試合で勝てていないので、まずはサガン鳥栖戦で5試合ぶりの勝利を手にできるかでしょうね。 ■主力のコンディション調整は大きなポイント ――福西さんはジュビロ磐田時代にアジアを戦った経験がありますが、アジアのアウェイはやはり厳しいものですか? 福西 アウェイは移動の負担だけでもかなりしんどいですよ。移動の距離、気候の違いでどっしりと疲労感があります。神戸のアウェイは蔚山、浦項スティーラーズで韓国だからまだいいですけど、広島はオーストラリアのシドニー戦と、フィリピンのカヤ戦がありますからね。 ターンオーバーで主力を温存したとしても帯同したら体がアウェイに順応しようとするし、出る可能性がある以上、調整しなければいけないので負担になります。また、移動続きでほとんど練習ができないというのもコンディション調整を難しくさせますね。 試合に出る選手はしっかりと体を動かせるのでいいですが、主力を温存した場合、まともに体を動かせなくて、コンディションの山を作れないというのは、後々キレがなくなっていく原因になりかねない。 向こうに行って、試合後に出てない選手を走らせたりしますが、会場によってはやるなと言われたり、時間が限られていたり、いずれにしてもボールを使った練習はできない。じゃあ帰ってきて試合の前日に強度を上げた練習をどれだけやるか。まったく試合に出ていないのであればやるけど、さすがに前日ではそこまで上げられない。 シドニー戦後はアウェイの浦和戦とアウェイが続き、カヤ戦後はホームだけど12月なので寒暖差は結構厳しいはず。それは広島もよくわかっていると思うので、主力のコンディション調整をどうするかはひとつポイントになると思います。 ――改めてACLがなく、リーグに専念できる町田はかなり日程面では有利ですね。 福西 町田は日程面では有利ではありますけど、ポイント差的にもう一つも落とせないのでプレッシャーは大きく、そのプレッシャーに慣れていない。また、前述したように広島や神戸とは違った厳しさに直面していますよね。