【独自】送金の先には“体制の弱体化” 韓国の「送金ブローカー」が語る対北朝鮮送金の実態 日本メディア初取材
送金の先には“体制の弱体化”
警察の取り締まりが厳しくなったことで、送金する側も警戒し、ここ数カ月は送金仲介件数が激減したと話すチュさんだが、ブローカーは続けていくと話す。 それは、送金が単なる金銭的な支援だけではなく、韓国の豊かさを伝え北朝鮮の体制を崩すことにもつながると考えているからだ。 「“外に出た家族は、お金を送ることができるくらい豊かに暮らしているのだな”という憧れも生まれるのです。ブローカーを通じて韓流文化を伝えるCDやUSBが入ることもあります。北朝鮮の家族への送金は、家族の生存確認、外部文化や人権を知らせるためにも大事だと思うのです」 実際、韓国メディアの取材に応じた脱北者は、北朝鮮に住んでいた頃、隣人が韓国の家族から生活費を受け取っている状況から韓国の豊かさを知って、脱北を決意したと話している。一方、報道では、外部からの外貨送金が韓国の体制宣伝や民主主義の普及につながることから、金正恩総書記が近年ブローカーの大掃討作戦を実施したとも伝えている。南北の溝が深まる今、送金はこれまで以上に難しくなっている。 「脱北者は誰もが一つは痛みを持っています。誰かは親を残してきたし、誰かは子を残してきました。韓国のパスポートはこの世のどこにでも行けるのに、(家族がいる北朝鮮は)唯一行けない所です。脱北者のほとんどは“(北朝鮮の家族が)飢え死にさえしなければいつか再会できる”と信じているのです。“統一がいつかは実現するから、それまで死なずに生きていてほしい”という小さな願いなのです。ところが金を送ってくれる仕組みは用意されていません。これからも、法に触れるからといって金を送らない人はいません」(送金ブローカー・チュさん) 今日も北朝鮮メディアから流れてくるのは、金一族の功績をたたえる映像や、笑顔で働き暮らす住民たちの映像だ。しかし、体制の被害者とも言える脱北者と残された家族たちの現状は厳しさを増し、支援のあり方は今まさに岐路に立たされている。 (FNNソウル支局 柳谷圭亮)
柳谷圭亮