和田秀樹「専門医」の証書は要注意のサイン?日本で患者の立場に立って検討する医者を探すのに苦労するワケ
総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口が総人口に占める割合は、29.3%と過去最高だったそう。高齢化が進むなか、精神科医の和田秀樹先生は「今の高齢者をとりまく医療は<本当は必要がないのに、やりすぎている>可能性がある」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新刊『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』から、和田先生流・医療とのつきあい方を一部ご紹介します。 【書影】30年以上の高齢者医療の経験とデータからまとめた、医者と賢くつきあう心得。和田秀樹『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』 * * * * * * * ◆治療のメリット・デメリットを相談する医者を見極める 開業医のクリニックを訪ねると、待合室の目立つところに「**学会専門医」とか「**学会認定医」などという証書がうやうやしく飾ってあるのをよく目にします。 この医者は「専門医」の証書が患者に対する権威づけになると満足しているかもしれませんが、患者にとってこの証書は要注意のサインと考えてください。 というのも、日本は基本的に臓器別の専門分化医療なので、自分の専門分野である臓器の病気の治療には長けていて、その分野での専門的な医療を受ける場合はいいのですが、それ以外の病気の治療はおざなりにされがちです。 病気ごとに複数の専門医にかかっても、全体を診てくれる医者がいないので、どこかに不具合が生じ、それが原因でヨボヨボにされてしまう可能性があります。 たとえば、循環器内科医が薬でコレステロール値を下げて、仮に動脈硬化の進行を防げたとしても、コレステロールが減ってしまうことで免疫細胞が十分につくられなくなる可能性があります。 体がだるいと思っていたら、肺炎にかかっていたというのは、おそらく免疫力が低下したせいだと考えられます。
◆患者のQOLに欠かせない総合診療医はたった2% 医者は病気があればその治療を優先したがりますが、それが必ずしも患者さんにとっていちばんいい選択なのか。 患者の立場に立って「QOLが保たれるか」「その治療が活力を奪い、老化を進める原因にならないか」といったことを検討する医者の存在が必要なのですが、日本でそうした医者を探すのは大変苦労します。 イギリスでは、ジェネラル・プラクティショナー(GP)という制度があります。患者は特別な理由がないかぎり、直接専門医のいる病院には行けないしくみになっていて、一人のジェネラル・プラクティショナーに継続的にかかわり、そのとき必要な検査や治療、緩和ケア、家庭の問題なども含めて、ケアを受けることができます。 日本では「かかりつけ医をもとう」と厚労省は呼びかけていますが、一人で複数の科に対応できる医者は非常に少なく、一人の患者さんの健康に関する総合的な相談に応じる「かかりつけ医」として役割が果たせていないのが実情です。 近年は、全体的な健康問題にかかわる総合診療医を育てようという機運が高まってきました。患者さんのQOLや価値観に寄り添った治療の選択をアドバイスし、飲んでいる薬を把握して多剤併用を防ぐことが期待されています。 しかし、残念なことに、日本に総合診療医は2%しかいません(これもきちんとしたトレーニングを受けていない人がほとんどで、必ずしもあてになりませんが)。 超高齢社会に求められる医者は、治療のメリット・デメリットが全身的にどんな影響を及ぼすのかを判断しながら、その人の望む暮らし方をかなえるために手助けできる医者です。そうした医者が一刻も早く増えることを願っているのに、なかなかその動きは見られません。
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