日記60年「自分の命」 伊東市富戸・石井さん「生活、仕事成長できた」
伊東市富戸の石井照市さん(77)は、長年にわたって日記をつけている。一日も欠かすことなく書き続け、まもなく60年の節目を迎える。「日記が自分を成長させてくれた。今では自分の命みたいなもの」とその存在に感謝している。 きっかけは高校生の頃に友人からもらった「樋口一葉日記」だった。それを読んで、自分も書いてみようと思い立った。1965年4月6日の夜、最初の日記を書いた。その日にあった高校の始業式のことなどを振り返っている。「清純な気持ち」「気力十分」など、若者らしい言葉にあふれる文章だった。 書き始めてしばらくたったある日、新聞で「浜松市の女性が30年間日記を続けた」という記事を読んだ。「この人ができたのだから、自分だってできるはず」と励まされ、気持ちを新たにした。 「3年目を過ぎたころから、書くことが苦にならなくなった。もう一人の自分がいるような感じというか、出来事を客観的に見ることができるようになった。そのことが、日々の生活や仕事にもすごく役立った」と振り返った。新婚旅行や12日間の欧州視察研修にも日記帳を持参したという。 先日、日記帳を整理した時にパラパラとめくってみた。74年5月26日の結婚式の日には「一世一代の素晴らしい式だった。もう思い残すことはない」、市民部長で市役所を退職した2007年3月31日には「40年間毎日全力でやってきた。明日から仕事のことを考えなくていいのはうれしい」などの言葉があった。 「なんだか恥ずかしいけれど、勇気づけられた。これからは時々読み返してみようかな」と笑って話した。富戸区長を務めるなど、今も忙しい日々を送る。「日記に助けられながら、できることをやっていくだけ。これからも元気な限りは、書き続けていきたい」と静かに語った。
伊豆新聞デジタル