上司が「うちは掃除や研修にも給料を払ってやってる」と言っていますが、そのせいで毎日3時間は「残業」です。これって本当にありがたいことなんですか?
ブラック企業の経営者には「うちは掃除や研修の時間にも給料払ってやってる」など、労働者を大切に思わない発言が多いものです。掃除や研修を労働時間に含める一方、毎日3時間もの残業が続いてしまうことは、労働基準法に違反しないのでしょうか? この記事では、労働基準法による労働時間と時間外労働時間の取り決めについて解説し、筆者の体験をもとに「掃除と研修」が正当な労働時間と見なされるのかを検証します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
基本的な労働時間の取り決めについて
長時間労働を是正してワークライフバランスを改善し、女性や高齢者も働きやすい環境をつくるために、「時間外労働の上限規制」が法律に規定され、2019年から実施されています。現在の労働基準法では、次の2つの原則を守る必要があります。 ・労働時間の限度は1日8時間 および 1週40時間(法定労働時間) ・休日は毎週少なくとも1回(法定休日) これらの制限を超えて労働させる場合には、企業と労働者が結ぶ協定「36協定」の締結と届出が必要になります。36協定では、「時間外労働をおこなう業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決めなければなりません。 時間外労働は、原則として次の上限を守る必要があります。 ・月45時間 ・年間360時間 ただし毎月45時間の残業を続けると、年間で540時間となってしまうため、年間の残業時間を把握しておく必要があります。 また、特別な事情があって労使が合意する場合でも、次の決まりを守らなければなりません。 ・時間外労働が年720時間以内 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満 ・時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」がすべてひと月あたり80時間以内 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度 これらのことから、毎日3時間残業をした場合、稼働日が20日間としても、月の残業時間が60時間となってしまうため、そもそも36協定の上限が守られていないと考えられます。ただし、繁忙期などのやむをえない事情で、月45時間以上の残業をおこなう期間が6ヶ月以内であれば許容範囲となります。