名古屋城でラッパーのライブに熱狂! 意外な組み合わせが示す未来とは?
DJが流すダンスミュージックや、ラッパーのライブに熱狂する人たち。バックにはライトアップされた天守閣。その最上部には2つの“金鯱”が輝いている――。 実はこれ、名古屋市の名古屋城で11月16日にあった「Boiler Room Nagoya(ボイラールームナゴヤ)」というイベントだ。「Boiler Room」はロンドンに拠点がある各国のDJのプレイをインターネットで生中継するプロジェクト。この日の様子も世界中に配信され、「クールだ!」「すごい! これはどこ!?」とさまざまな言語でコメントが寄せられた。 天守閣の木造建て替え問題が賛否を巻き起こす中、なぜこんな大胆なイベントが実現できたのか、主催者らの思いを聞いた。
名古屋城の文化的な価値を高める
「名古屋城は城郭建築の技術の粋を集めて築城されており、徳川家の城ですから格式も高い。詳細な資料も多く残っており、往時の様子を忠実に再現できている。日本一と言っていい城だと思っています」と名古屋城総合事務所の吉田祐治さんは語る。 「それなのに、名古屋市民にはまだまだその価値があまり評価されていないように感じます」 確かに今、地元の人たちは名古屋城にそれほど愛着を持っていない人も多いようだ。Boiler Room Nagoyaを訪れた人たちからも「名古屋城に来たのは初めて」「小学校の遠足で来て以来」という声が少なくなかった。 しかし、吉田さんは「Boiler Roomは集客が主な目的ではなかった」と言う。実際、名古屋城を訪れる人の数は年々増加傾向にある。昨年の入場者数は約220万人と、国内の城では大阪城に次ぐ2位。平日でも国内外からの多くの観光客で賑わっている。ではなぜ、名古屋城であえてターゲットの絞られる「クラブイベント」を開催したのか。 「名古屋城では数年前から、城そのものを学ぶ講座や伝統的な催しに加え、現代アートや実験的な要素のあるイベントも開催しています。歴史を学び、芸術にふれ、人々が交流する、文化的な施設としての価値を高めていきたいと考えているためです」 つまり名古屋城を「文化が生まれ育つ拠点」として位置付け、多彩な催しを通して、史跡としても、市民が愛着を持てる場としても価値を高めていきたいという狙いなのだという。また、その過程では「市民とのコミュニケーションを大切にしたい」と吉田さんは語る。その手本となったのが、昨年まで名古屋テレビ塔と周辺の久屋大通公園で開催されていた「ソーシャルタワーマーケット」というイベントだった。