一時「1ドル158円」に迫るも再び円高に…年末にかけての米国の「金利上昇・株安」の現実味。米ドル円への影響は【国際金融アナリストが解説】
「米ドル安・円高」に戻る可能性も
ところで、このように日銀の12月の金融政策決定会合のあとに円が急落したのは、1年前も同じでした。2023年の12月日銀会合も19日に行われ、政策変更はありませんでした。 この日の米ドル/円は142円台前半から145円寸前まで、やはり3円近くも大きく米ドル高・円安へ動くところとなりました。ただその後は、年末までに140円割れ近くまでほぼ一本調子で米ドル安・円高へ向かいました(図表4参照)。 2022年の日銀の12月金融政策決定会合では、「サプライズ」の政策変更を受けて137円から130円まで1日で約7円も米ドル/円が急落する大波乱が起こりました。この印象がまだ強く残るなかで、日銀の12月の会合は、円相場が大きく動く年内最後のイベントと位置付けられ、投機的な仕掛けが大きく入る傾向が強くなっていると考えられます。 ただ、会合後の円相場の動きが一段落したあとは、その反動も入りやすかったということを、すでに見てきた2023年のケースが示していたということではないでしょうか。そうであれば今回の場合も、基本的には金利差次第ではあるものの、日銀会合で円売りを仕掛けた反動で、年末にかけて米ドル安・円高に戻す可能性もあるかもしれません。
今週はクリスマス週間だが…米金利上昇・米国株安にも要注意
今週はクリスマス週間となるため、市場参加者も少なくなり、薄商いでの小動きが続く可能性が高いでしょう。ただここ数年は、年末にかけて意外に大きな値動きがみられるところとなりました。 上述のように、2023年は12月20日の日銀会合後に記録した145円寸前の米ドル/円の高値から、年末にかけて140円割れ寸前まで最大で5円近い米ドル安・円高となりました。また、2022年は、12月19日の日銀会合後に記録した米ドル/円の安値130円から、年末にかけて134円半ばまで、やはり最大で4円程度の米ドル高・円安となりました。 この2つのケースは、為替相場が大きく動く年内最後のイベントである12月の日銀会合の反動が大きかったように感じられます。その意味では、クリスマスで薄商いのなかでも、先週の日銀会合で円売りを仕掛けた分の反動で、年末にかけて米ドル安・円高にどこまで戻すかはやはり注目されるのではないでしょうか。 先週の米ドル/円の値動きは日銀会合のあとが大きくなりましたが、金利の動きとしては18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)前後の米金利の上昇が目立ちました(図表5参照)。 これは、FOMCは事前予想通り0.25%の利下げを決めましたが、2025年以降の利下げ見通しが大きく後退したことへの反応とされました。 しかし、このような米金利上昇が続くなか、米国の主要な株価指数であるNYダウは、19日まで約50年ぶりの10営業日連続の下落となるなど、株価の急落も目立つところとなりました。クリスマス週間ではあるものの、こういった米金利上昇・米国株安の動きも要注意といえます。 米ドル/円は12月に入ってから148円台から158円近くまで大きく上昇。それを後押ししたのは、米金利の上昇を中心とした日米金利差の米ドル優位・円劣位の拡大でした。 一方、米国株の下落不安も拡大してきたことを考えると、さらなる米金利上昇=米ドル高にはおのずと限界があり、これまでの反動リスクが試される可能性もあるのではないでしょうか。以上から、今週の米ドル/円は154~158円のレンジで予想します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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