デザインを変えないモテルチェンジは大賛成だが! N-ONEに必要なのは「安さ」と「楽しさ」じゃないのか?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
■N-ONEはホンダeを目指すべきだった
今回試乗したのはRSのCVTだった。 RSにはターボエンジンしかなく、パワーは充分だし、走り屋グルマのような音も出ていて、まさにオトコのクルマという仕上がりになっていた。 それでいて街中をのんびり走っていると静かで、乗り心地も悪くない。 ホンダの軽自動車はさすがの出来で、N-ONEでも室内の広さは充分だし、座面を畳んで後席を広い荷物置き場にすることもできる。このあたりの使い勝手はN-BOX、N-WGNと同じで、実用性能の高さを実感できる。 つまり、かつてのN360ファンにとっては完璧なクルマなのだが、N360を知らない世代に訴えかけるものがあるのかというと、そこは疑問である。 時を超えて魅力を感じさせる外観のデザインはいいとしよう。 気になるのは室内で、ホンダeのような新提案がまったくないのが残念なのだ。メーター周りもインパネ全体も旧態依然。運転席にいてもN-BOXとN-WGNとの違いは着座位置の高さ以外に感じることができない。 先ほどの話に戻そう。今のユーザーがこのクルマに高級感やスポーツ性を求めるのだろうか? 昔のN360はスポーティな走りをウリにしていて、それが当時の若者を熱狂させたわけだが、そのままのコンセプトが令和の時代に通用するのか。それよりもN-BOXやN-WGNにはない「楽しさ」や「新しさ」を追求するべきではないのか。ずっとそんなことを考えていたのである。 それを求める人がいるなら、N-ONEにプレミアムもRSもあっていい。でも、私なら豪華なシートやスポーティな足回りにプラス料金を支払うより、キャンバストップや個性的な内外装におカネを使いたい。ホンダeでできたことが、なぜN-ONEでできないのか? もうひとつ、冒頭で「スタイルを変えないならもっと安くしてほしい」と書いたが、新型車が価格を下げて出てきたら相当なインパクトがあったはずだ。 最低限の装備を揃え、内外装をシンプルにした破格値のベーシックグレードがあってもよかった。 今からでも遅くはない。「安いN-ONE」と「楽しいN-ONE」で現代の若者たちを振り向かせてほしい。 それが高校時代、N360に憧れていた私の願いである。 (写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)