フォードが日本市場から撤退して8年たった今でも“新車”が売られているワケは?
旧正規ディーラー系の並行輸入車も
考えられるのは、2023年の場合で299台となるJAIAの統計データは、日本国内に多数存在する並行輸入業者が扱っている「新車並行輸入車」と「中古並行輸入車」の合算数ではないか? ということだ。 アメリカなどで乗られていた中古車を日本へ輸入した「中古並行輸入車」であっても、日本での初度登録は車検3年の新車扱いになる。それゆえ、年間数百台もの「フォードの新車」が統計データに載る──という、至極まっとうな結論だ。 しかしながら、比較的小規模な並行輸入業者が輸入したフォード車だけで、そこまでの数になるとも思えない。きっとどこかに「比較的大規模な、今なおフォード車を取り扱うネットワーク」があるのではないか──ということで探してみると、やはりあった。 フォード社の撤退に伴ってフォード・ジャパン・リミテッドの正規ディーラー網は消滅した。だが東京・日本橋浜町のピーシーアイが2016年10月1日、日本国内でのフォード車オーナーのアフターサービス業務を提供するフォード・モーター・カンパニーのパートナー企業となった。そしてピーシーアイのネットワークに加盟する各企業が今も「フォード〇〇サービスセンター」などの看板を掲げ、まずはフォード車オーナーのためにアフターサービスを請け負っている。 そしてネットワーク内のさらに一部の企業は、フォード車の新車並行輸入も、ユーザーからの注文に応じて行っている。特に中京エリアの「フォード岐阜」「フォード四日市」「フォード松坂」を展開しているエフエルシーは、フォードの最新ラインナップを積極的に取り扱っているもようだ。 またピーシーアイのネットワークとは異なるが、光岡自動車が展開しているBUBU MITSUOKAも、B.C.D(BUBU CALIFORNIA DIRECT)なる独自の直輸入システムを通じて、フォード車の中古並行輸入に積極的である。 もちろんアメ車フリークにはおなじみとなる有名並行輸入業者の取扱数も少なくないだろう。そうした背景をベースに、フォードの“新車”は今も海を渡り日本に上陸。年間数百台が売れているのだ。根強い人気があるブランドゆえに、アメリカの大統領が交代するこのタイミングを機にフォード本体がまた日本へ戻ってきてくれないかなぁ……とも思うわけである。 (文=玉川ニコ/写真=フォードモーターカンパニー/編集=櫻井健一)
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