読経の料金をお寺に聞いたら「お気持ちで…」いくら払えばいい? お布施が“明朗会計”ではないワケ
“坊主丸もうけ”ではない厳しい現状
寺院が“目安”として提示している金額について、坂本さんは「当たり前ですが、お寺側が“もうけたいから”と恣意(しい)的に決めているわけではありません」という。 「お寺はひとつひとつが登記された宗教法人なので、勝手に何かを決めることはできません。あくまでも、歴代の住職が受け継いできた寺院をこの時代にたまたまお預かりしてお護りする役目をいただいているだけで、決して住職の私物ではないという姿勢が大切だとも考えています。 私がお預かりしているお寺では、お檀家さんの代表も含めた責任役員会議を開き、地域の事情やお寺の経営状況などを総合的に考慮した上で、具体的なものではありませんが『このくらい納めていただいたほうがよいのでは』という目安を示していただいています」 “坊主丸もうけ”という言葉があるように、寺院には潤沢な資金があると思っている人も多いかもしれない。しかし、文化庁宗務課が公表する「宗務時報No.127(令和6年3月)」で宗教法人の1年間の収入合計を見ると、72.2%の宗教法人は年間収入が500万円未満、85.3%は1000万円未満という結果になっている。ここから水道光熱費や修繕費をはじめ支出を引くと、人件費さえままならずに、教師や役所勤務など副業をもつ僧侶も多いという。 坂本さんも「社会の皆さんからは、大きなお寺や観光事業を行っているような寺院が目につきやすいため、余裕のある業界と思われるかもしれません。しかし、実態としては住職や寺族だけで運営している個人事業主のようなところがほとんどで、余裕のある運営ができている寺院はほんの一握りです」と吐露する。
「お坊さん派遣サービス」の問題点
最近では「明朗会計」をうたい、インターネットを通じて僧侶を派遣するサービスも出てきている。一時はAmazonにも“出品”されていたが、全日本仏教会が「お布施は、サービスの対価ではありません」「宗教行為をサービスとして商品にしている」と指摘するなど、物議を醸した。 「仏教の教えに基づく布施行と馴染まないのはもちろんですが、明示された金額のうち何割かはサービスの運営会社の収入となります。派遣事業を行う会社にもよりますが、すべてがお布施として納められるわけではなく、半分以上が派遣業者の紹介手数料となる場合もあり、納めた方の“お気持ち”と実態とで食い違いが発生してしまうこともあろうかと思います。 私は、一番大切なのは法要を希望されて行う皆さんなので、ご本人たちの気持ちに折り合いがつくならば、それでもよいかとは思います。ただ、派遣された僧侶が実際に宗派や包括宗教法人によって僧侶の資格があると認められた者であるか判別できない、WEBページに有名寺院の写真があり派遣を依頼したら、実際に来た僧侶は写真とはまったく関係がなかったなど、亡くなった大切な方を弔いしっかりとご供養したいという方々を困惑させるようなことがなければよいなと願っています」(坂本さん) なお、坂本さんが指摘したように、お布施の目安は地域によって異なり、また宗派によっても違いが出てくるそうだ。お盆に法要をあげる人、お墓参りに行く人は、お布施の金額をどのような基準で決めればよいのか、考え方を含めて住職と話してみるのもいいかもしれない。
弁護士JP編集部