1打席ごとに変わるバッティング

「バッティング練習を見て、びっくりしました。打球の飛距離がすごくて、普通に引っ張って簡単にフェンスオーバーさせる。まったくというくらい変わっていました。2年目にはシーズン202安打も打っていましたけど、ヒットを打つためにいろいろ考えたんでしょうし、打球の飛ばし方でもつかんだものがあるんだと思います。 体も大きくなって、スイングも明らかに強くなっていました。大学のときもそのくらいのポテンシャルがあったのかもしれませんが、2年間でこんなに変わるのかと驚かされました」 青木ほど「変われる」選手は珍しい。イチロー以来となる史上2人目の200安打超えを果たしても、満足することはなかった。 「すべてにおいて意識が高くなっていたと感じましたね。食事に行っても野球の話になるし、どうやって活躍するかというのが常に頭にあった。最初はヒットをしっかり打って、それがある程度できたら強い打球を打って、長打も増やしてというビジョンも持ってやっていたと思います。 僕が入ったときは歯の矯正をしていて、2、3年かけて直していた。もちろんパフォーマンスを上げることに結びつけるためです。あらゆる角度から野球を考えて『絶対に、これ』ではない。今季でもそうですけど、いろいろなバットを使ってみたりする。毎打席、構えを変えたり、打ち方を変えたりする。いろいろな形に変われるというのが、本当に青木さんの強みです」 うまくいく保証はないだけに、変えることにはリスクが伴い、勇気も要る。高いレベルで安定した成績が出ているなら、なおさらだ。それでも青木は、踏み出していける。 次回記事『「プロ生活に別れ」ヤクルト・青木宣親、球史に残る安打製造機は「非常識発想」から生まれた』では、ほかの選手はマネできない青木が進化し続けられた理由や、後輩たちに残した財産などについて武内氏が明かします。