「よさこいは人の温かさと街全体でつくり上げる」感動の連続で、取材のはずが踊り子に 土佐弁も分からない記者は「本当の高知県民」になれるか
▽踊って笑ってあおがれて 2日目は雲一つない青空。出番前、1日目には雨をしのぐために見られなかった他のチームの踊りに魅了される。衣装も振り付けも、同じチームは一つとない。青空に映える踊り子の姿に、見ているだけで心が躍った。 日光の照り返しと人々の盛り上がりで、会場はより一層の熱を持つ。「よさこいの暑さをなめちゃいけない」という経験豊富な踊り子の言葉を思い出した。 長く伸びる会場の終点で、踊り子のためにと地元住民の用意した水やお茶で喉を潤す。人の温かさと街全体で作り上げる祭りだというよさこいの魅力を実感した。 すっかり日が落ち、疲れ切っている体に、いつも歩いている商店街は終わりのないトンネルのよう。お客さんが拍手をする代わりに、うちわであおいでくれる。「頑張って」という声と風がうれしかった。 口の中が乾くが、必死に笑顔を作った。まっすぐな瞳でこちらを見ている子どもたちが目に入る。いつか踊り子になるかもしれない子どもたちの瞳に、少しでも楽しそうに映っていたかった。
最後の会場では、隊列を崩してお客さんに近づいて踊った。踊り子は鳴子を鳴らし、お客さんは鳴子のリズムに合わせて手をたたいた。笑顔が広がっていった。 一夜明けると、祭りの4日間が夢だったかのように、街は普段の落ち着きを取り戻していた。商店街の横断幕は跡形もなくなっている。私も朝から仕事に出て、高知県で生まれ育ったという取材先の人に祭りに出たことを報告した。すると「俺よりも高知県民やな」と声をかけられた。ぐっと心の距離が近づいた気がした。社会人初の夏が終わり、私の高知生活はようやく本当の始まりを迎えたようだ。