「よさこいは人の温かさと街全体でつくり上げる」感動の連続で、取材のはずが踊り子に 土佐弁も分からない記者は「本当の高知県民」になれるか
▽鍛錬の1カ月 7月1日、練習が始まった。放課後、子どもが帰って静まりかえった小学校の体育館を借りて練習する。蒸し暑いが、参加する踊り子たちは「久しぶり」とコロナ禍明けの4年ぶりの再会でうれしそう。なじめるだろうかと不安がこみ上げた。 最初はステップだけ、次に上半身の動きと、段階的に振り付けを教わる。「正調」という昔から伝わる振り付けがあるが、今では多くのチームがアレンジし、毎年異なる振り付けや音楽・衣装を披露する。だから毎年参加している踊り子も、初めての踊り子も、年が変わればスタートラインは同じ。 懸命に練習に励むが、想像以上に動きが多い。Tシャツの重さを感じるほどの汗がしたたり落ちた。 練習は、仕事を終えたあとで毎日のように通った。練習時間は2~3時間。遅刻や欠席が続いてしまう日もあったが、10日たってようやく4分弱の曲の振り付けを習い終えた。頭で復唱しながら踊ったが、考えていると足や手が置いてけぼりになってしまう。考えることをやめ、体に染みこませることを優先した。
初めてのため苦労が多かったが、笑顔の時間は日を追うごとに増えた。休み時間になると「1人で参加してるの?」と会話の輪に招いてもらった。そこからは祭りや休日の話で盛り上がり、少しずつチームに溶け込んでいくことがうれしかった。 ▽よさこいは高知が発祥 よさこい祭りは1954年に高知で誕生した。戦後の不景気の中で、市民を元気づけようと始まった祭りだ。 毎年8月9日の前夜祭で始まり、2日間の本番、続く後夜祭と、全4日の日程。本番では約200チームの踊り子約1万9千人が、カチカチと音の鳴る鳴子を持ち、個性ある踊りを披露する。北海道の「YOSAKOIソーラン」など全国に類似の祭りが広がった。 本番の2日間では、参加チームが市内に点在する演舞場と競演場をまわり、踊りを披露する。会場の多くは商店街で、商店街の端から端までチームごとに踊り抜ける。祭り開始の午後1時15分から9時半まで、時間の許す限り、会場を巡り踊り続ける。