「よさこいは人の温かさと街全体でつくり上げる」感動の連続で、取材のはずが踊り子に 土佐弁も分からない記者は「本当の高知県民」になれるか
出場チームは、早いチームで2月ごろから踊り子の募集を始める。有名チームは、定員になり次第募集を締め切る。高知県外のチームも出場している。 ▽鳴子が鳴らない 「鳴子」を持って踊ることもルールの一つ。甘く見ていたが、そう簡単ではない。鳴子を持つ向きによっては、うまく音が出ない。「親指と人さし指でつまんで、残りの指は添えるように」と何度も指導された。難しいのは、音を鳴らさない振り付けだ。間違えて鳴らすと、体育館に自分の音だけ「カチン」と響き渡った。 鳴子以外にもルールがある。必ず前進すること。祭りでは商店街などの一本道を前へ前へと進みながら披露する。これもまた大きな課題となった。振り付けが身についても、なかなか踊りながら前に進めない。きれいに列になって踊ることがよさこいの魅力の一つだが、隣の人に後れを取ってしまう。「横とそろえて!」と何度も注意された。 啓子さんが「みんなが踊れるような振り付けにしてもらった」と言う他のチームよりも易しい振り付けも、一度もよさこいを踊ったことのない慣れない身にとっては、一つ一つが難しく思えた。
▽緊張の本番 8月10日午前6時。吹き荒れる雨風の音に起こされ、本番当日を迎えた。空模様が気になる。それでも、 街は人がどっと増え、提灯などの飾り付けがされ、路面電車のダイヤもよさこい仕様。街全体がお祭りムードに包まれている。 先導する音響車両「地方車」の後ろに並ぶ。地方車の上には、大将ら「歌い手」が登り、曲を演奏する。地方車の照明から、舞台に立ったかのような光が降り注がれた。 沿道には多くの観客が詰めかけ、曲に合わせて体を揺らしながら拍手を送っていた。点在する会場を回って踊る。心配していた天気は、毎回出番の直前に雨が上がり、気持ちよく踊ることができた。 各チームの地方車から放たれる音楽が響き渡る。 1日目が終わり、チーム最年少の古泉桜ちゃん(3)はうれしそうに「メダルいっぱいもらった」と見せてまわった。その笑顔を見ただけで、疲れが一気に吹き飛ぶ。印象的な踊り子には、各競演場でメダルが贈られる。桜ちゃんは練習中も人一倍大きな声で歌い、元気に踊っていた。その活躍が本番でも伝わっていたのだろう。初日にひとつもメダルをもらえなかった私は桜ちゃんをうらやんだ。