子ども同士の対話がめちゃくちゃ盛り上がる教師の言葉掛け
仲間と〈つながる〉意識を育むコトバ
さて,授業の続きです。子どもたちが図解を描き,提出されました。 現在教育現場ではiPadなどデジタル機器を使って,書いたものを提出したり,提出されたものを教師が一斉に提示して比較したりします。その比較する際のコトバです。教師が「〇〇さんのものを見てみましょう」と促してしまいがちなのですが,ここで「(話を)聞きたいのはどれですか」と問いかけることで,一気に対話意識が子どもたちの中に生まれます。子どもたちは仲間の図解を改めてきちんと見つめ,自分が話を聞きたいものを選びます。そうして話される内容は,きちんと自分の耳に入ってくるのです。対話意識を育むとともに,授業が自分事になる瞬間なのです。 それでは改めて子どもたちの図解を見てください。例えば左上の子の図解。これ,実際はカラーで,全体が赤色で塗られ,そこに,青色の点々が描いてあるのですが,聞いてみたいでしょう? 描いた子に! この子は次のような説明をしてくれました。 「また白馬に会えてうれしかった場面だから,赤で塗ったんだけど,馬頭琴を組み立てながら,矢が刺さって逃げ出してきたことや,白馬が死んでしまったことなんかを思い出して,それからまた馬頭琴を組み立てて……ってなるから,白馬に会えるのはうれしいんだけど,悲しいことも何度も思い出すから,青色の点々をたくさん描いているの……」 それを聞いて,クラスの子どもたちは,「ああ~」と頷いていました。 また,右上の図解は,周りが青色で塗られ,中央が赤色になっているのですが,それは,「白馬が死んでしまったことは変えられないから,その悲しさがいつもあって,でも,馬頭琴を組み立てたらまた白馬に会えるから,うれしい気持ちが出てきたから真ん中は赤色」なのだそうです。 今回は,国語の授業で全員が考える,活動できるシチュエーションの例を紹介しました。そしてそれが,子ども同士の繋がりを生む……。 授業は常に子どもたち全員のものでなくてはなりません(これが難しいのですが)。そして,子どもたち同士の意識が繋がっていること。教師と子どもとの繋がりが縦糸だとすれば,子ども同士は横糸ですね。その横糸をつくるコトバをかけ続けなければなりません。そのことがクラスをつくっていくのですから。 クラスは「授業」でつくります。子どもたちが授業を通して関わり合っていく過程こそが,学級経営なのです。そのために投げかける教師の「コトバ」はやはり重要で,意識してコトバを紡いでいきたいものですね。 今月のまとめ クラスの全員の子が考えられる,活動できる,そして子ども同士の意識が繋がるシチュエーションを考えてコトバをかけ続けよう。その先に,プロ教師への道がある! 森川 正樹 関西学院初等部教諭。授業で勝負する教師のためのセミナー「教師の詳細辞典セミナー」講師。国語科の「書くこと指導」「 言葉の指導」に力を注ぎ、「書きたくてたまらない子」を 育てる実践が、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、日本教育新聞などで取り上げられる。県内外で「国語科」「学級経営」などの教員研修、校内研修の講師、学生に向けたセミナー講師もつとめる。著書に『授業の質を上げる 超一流教師のすごいメモ』『どの子も書きまくる!作文指導アイデア』(いずれも明治図書)、教師のためのスケジュール帳『ティーチャーズ ログノート(』フォーラムA)の監修など多数。 *『月刊教員養成セミナー2024年5月号』 『教師力がアップする“教室コトバ”辞典』より 教師になったら即 “使える”コトバを毎月ご紹介。豊富な経験から生まれたコトバたちは心強い味方になってくれますよ。是非ご覧あれ!