バックオフィスこそが会社を変える
創刊61年の老舗月刊誌
――『月刊総務』は61年の歴史を誇る日本唯一の総務専門誌ですが、どんな雑誌なのでしょうか。 『月刊総務』は、総務が変われば会社が変わる、総務は会社を変える担い手になりうるとの信念のもと、総務担当者のモチベーションが上がる情報を提供する月刊誌として、1963年(昭和38年)に創刊されました。中心読者は、独立した総務部を持つ中堅以上の企業の皆様。一部の小規模企業では経営者の方が自ら読んでくださっています。 私自身、総務の仕事に魅せられた一人です。株式会社リクルートで経理、営業を経験したあと総務部に配属され、複合機の管理、車両管理、防災、町内会などの近隣対応を担当しました。これが面白かった。その後、販売会社の管理部門に異動しましたが、総務の楽しさが忘れられず、大手鮮魚専門店「魚力(うおりき)」の運営会社の総務課長に転職しました。総務全般はもちろん、株式公開にかかわる業務までやらせてもらい、楽しかったですね。『月刊総務』の存在を知ったのは、このときです。当時、総務のコンサルティングに関心があったので、これは面白いと思い、総務としての実績を分厚いレポートにまとめて持ち込んだところ、入社することになりました。しばらくは社内報事業やシンクタンク業務に携わったあと、2012年から編集長に。社長就任に伴って退く3年前まで、ずっと務めていました。 誌面作りにおいて、法令改正などの実務的内容はもちろん大事なのですが、個人的には「総務とは何か」を問うような、総務の本質を掘り起こす特集に醍醐味を感じていました。こういう特集は『月刊総務』にしかできない内容だと自負しています。
総務の「デキる」の捉え方
――豊田さんから見たデキる総務、デキない総務とはどんな人ですか。 総務で成果を出せる人と出せない人の最大の違いは、「総務」をどう捉えるかにあります。総務は一言でいうと、降ってくるあらゆる雑務をこなす、他の部署が担当しないことすべてをやる部署です。 それを「何が来るかわからない雑務係」と後ろ向きに捉えてしまえば、やらされるだけのつまらない仕事になりますが、「何をやってもいいんだ。好きにやらせてもらえる」と前向きに捉えれば、前例に囚われることなく、必要だと思うことをどんどんやって会社を変えていくことができます。 デキない人は、「ルールがこうなので、例外は認められない」「先輩の言うとおりに」と、前例を守ろうとします。環境変化が著しい昨今、こんな姿勢では新しいものは生み出せません。一方、デキる総務は「そもそもこれは本当にいるのか」「なくてもいいのではないか」と現状を疑い、一歩前へ踏み出すマインドへと切り替える。総務の仕事の醍醐味はそこにあります。自分で発案、実行した結果、会社が良いほうに変わっていく。仕事を通して創造の喜びを感じることができるのです。 総務の仕事は全社にまたがります。福利厚生の制度にしても、対象は全社員です。総務担当者が創造性を発揮すると、全社員に行動変容を求めることになります。会社全体にインパクトを与えられると考えればやりがいがありますが、全社員と絡まなくてはならない面倒臭さもある。たとえば紙の申請書をクラウドツールに変えれば、現場の人たちは行動を変えなくてはならない。人間は変化を嫌う傾向がありますから、「面倒だな、今のままでいいじゃん」と反発が起きるでしょう。それにどう対峙するかが次のステップです。「社員にギャンギャン言われるからこのままでいいや」となってしまえば成果は出せず、会社に貢献できません。自らの職務を前向きに捉えて、変化に伴う反発を乗り越えられるか。これがポイントです。 総務の責任者が「俺の目の黒いうちは何も変えるな」というタイプの人だと、激変する時代の課題から目を逸らしたまま、会社は衰退に向かうことになります。